・法務向けの生成AI「Harvey」が何かを知りたい
・日本での導入状況と、料金・データの扱いを押さえたい
・自社の法務にAIを入れるとき、何を見て選べばよいか知りたい
法務向けの生成AI「Harvey」が、2026年10月12日に東京オフィスの開設を発表しました。開設は2027年初頭の予定で、日本の法律事務所や企業の法務部門への支援を強めるとしています。
Harvey AIとは、契約書の分析やデューデリジェンス、訴訟の準備など、法律の仕事のために作られた生成AIのサービスです。押さえておきたいのは、料金は公開されておらず、データを保存する地域の選択肢に日本は無いということです。本記事では、できること、使っている組織、日本での動き、料金、データの扱い、使うときの注意、評価の観点を、2026年10月時点の公式情報で整理します。
この記事のゴール(読了目安 約7分)
Harvey AIの製品と日本での状況を説明でき、データの扱いと法規制の論点を踏まえて、法務AIを評価する観点を持てるようになる。
Harvey AIとは
法務向けの生成AI
運営は米国のHarvey AI Corporationで、公式サイトは自社を「法律と専門サービスのためのAIソフトウェア」と説明しています。対象の業務は、契約の分析、デューデリジェンス、コンプライアンス、訴訟です。汎用のチャットAIと違い、法律事務所と企業の法務部門を相手に作られている点が特徴です。
2026年10月時点の規模
同社の発表によると、利用者は世界85か国以上・3,500を超える顧客です。米国の大手法律事務所を売上順に並べた「Am Law 100」では8割が使っているとしています。2026年9月には、評価額155億ドルで5億5,000万ドルの資金調達を公表しました。
主な製品とできること
公式の製品紹介には2026年10月19日時点で11のモジュールが並びます。ここでは中心となる5つを取り上げます。契約書の分析に特化したContract Intelligenceや、法改正を追うHorizon Scanningなど、ほかのモジュールは公式ページで確かめられます。
WordやOutlookの中からも使えます。Agentsは、作業を始める前に計画を見て範囲を直し、承認する段を持っています。出力の主張ごとに引用が付き、手順も記録されるため、人が根拠をたどって確かめられる作りです。

使っている法律事務所と企業
東京オフィスの発表では、日本の利用者として次の組織の名前が挙がっています。
- 森・濱田松本法律事務所: 2024年に提携。事務所全体に展開し、新しい法令の一次分析や、翻訳した文書を日本語話者が確かめる使い方を公開しています
- 長島・大野・常松法律事務所: 法律事務所として名前が挙がっています
- 三菱商事: 企業の法務部門として名前が挙がっています
ほかの導入先は公式の顧客ページで紹介されています。本記事では、同社の発表に名前のある組織に絞りました。
日本での動き
日本向けの動きは、2026年10月に続けて発表されました。
- 10月2日: 日本の法律情報を扱うLegalscapeと提携。日本の法令・判例・行政ガイドラインと、解説書・実務書をHarveyから調べられるようにします。提供は「今後数か月のうち」とされています
- 10月12日: 東京オフィスの開設を発表。日本語での業務への対応も強めるとしています
日本法の情報源は、2026年10月時点ではまだ提供前です。日本の案件で使う前提なら、提供の時期を確かめてから評価を組みます。

料金と導入の形
2026年10月17日時点で、公式サイトに料金のページはありません。導入の入口は「デモの申し込み」で、組織として契約を結んで使う形です。
個人が申し込んで無料で試せる入口は、公式ページでは見当たりませんでした。ログインも米国・EU・豪州の地域ごとに分かれています。費用と契約の条件は、営業担当とのやり取りで確かめることになります。
データの扱い
セキュリティのページには、データについて次の記載があります。
地域の選択肢に日本はありません。国外で処理してよいかは、社内規程と依頼者との契約で先に確かめます。生成AIに個人情報を入れるときの考え方は、別記事で解説しています。
日本で使うときの注意
法務の生成AIを日本で使うときに確かめたい点は、主に次の3つです。
- 守秘: 依頼者や取引先との契約で、外部のサービスに文書を出してよいか
- 誤り: 引用をたどり、原典の条文や判例で中身を確かめているか
- 弁護士法: 法務省は2023年8月と2026年8月に、AIを使った法務支援サービスと弁護士法第72条の関係を示しています
2023年の整理で通常は違反しないとされたのは、弁護士が結果を踏まえて自ら精査し、必要に応じて修正する使い方です。ただし判断は個別の事情によるため、自社の使い方が当てはまるかは専門家に確かめます。生成AIに関係する法律の全体像は、別記事で解説しています。
法務AIを評価する観点
Harveyに限らず、法務の生成AIを比べるときに見たい観点は5つです。
- 情報源: 日本の法令・判例を調べられるか
- データ: 保存の地域と、学習に使われるかどうか
- 引用: 出力から原典までたどれるか
- 承認: 人が計画や結果を確かめる段があるか
- 使う場所: 普段のWordやメールから使えるか

【プロの視点】導入実績の数で選ばない
法務AIを選ぶとき、「大手事務所の8割が使っている」という数字で決めたくなります。けれどその数字は米国の大手事務所の採用率で、日本の案件で同じように使えるかまでは示していません。
見るべきは、自社の案件で出力を確かめるのに何分かかるかです。引用を開いて原典と照らす時間が短いほど、AIの下書きを実務に回せます。日本法の情報源がまだ提供前の今は、日本の案件で確かめる時間が長くなる前提で見積もります。
明日やる最初の一歩は、確認を終えた過去の案件を1つ選び、担当者が根拠を確かめた手順を書き出すことです。

【waltsu視点】答えの分かる案件で回数を重ねる
法務の確認は1件ごとに重く、AIの出力が正しいかを判定するだけで時間がかかります。確認が重いほど、試せる回数は減ります。
waltsuが重く見ているのは、AIの仕事を人が確かめられるかどうかです。答えの分かっている過去の案件で試せば、出力の当否をすぐ判定でき、回数を重ねられます。承認の段や引用の記録は、その確認を軽くする仕組みとして見ます。
明日やる最初の一歩は、審査を終えた契約を3件選び、当時の指摘を一覧にしておくことです。どの法務AIを試すときも、この一覧が採点の物差しになります。
よくある質問
Harvey AIとは簡単にいうと?
法律事務所と企業の法務部門のために作られた生成AIのサービスです。契約の分析、調べもの、文書の大量の確認などに使われています。
日本語や日本法に対応している?
同社は日本語での業務への対応を強めるとしています。日本の法令・判例を調べるLegalscapeの情報は、2026年10月時点で提供前です。
料金はいくら?
料金は公開されていません。公式サイトからデモを申し込み、組織として契約する形です。
個人や小さな会社でも使える?
個人が無料で試せる入口は、公式ページでは確認できませんでした。導入の条件は、申し込みの際に確かめる必要があります。
入力した契約書は学習に使われる?
公式には、入力・出力・アップロードした文書を基盤のモデルの学習に使わないと書かれています。保存の地域に日本は無いため、国外での処理の可否は別に確かめます。
この記事の要点
・Harvey AIは法律事務所と企業の法務部門向けの生成AIで、85か国以上・3,500超の顧客が使う
・2026年10月にLegalscapeとの提携と、2027年初頭の東京オフィス開設を発表した
・料金は非公開で、データは学習に使わないとされるが、保存地域に日本は無い
・評価は導入実績の数より、自社の案件で出力を確かめる時間で見る
まとめ
Harvey AIは、法務の仕事に絞って作られた生成AIで、日本でも大手の法律事務所や企業の法務部門が使い始めています。2027年初頭には東京オフィスが開き、日本法の情報源も加わる予定です。
一方で、料金は非公開で、データの保存地域に日本はありません。法務の業務にAIをどう組み込むか迷う場面が出てきたら、評価の物差しづくりから試す範囲の決め方まで、waltsuがご支援します。
