・SNSがあればサイトはいらないと感じている
・サイトにかけた費用の効果が見えない
・制作会社の見積もりをどう比べるか迷っている
Webサイトを作る会社として、あえて問いかけます。Webサイト(ホームページ)は、もう不要なのではないでしょうか。SNSでも地図でもAI検索でも会社を見つけてもらえるいま、サイトに高い制作費をかける意味はあるのか。制作会社に聞けば「必要」と答えるに決まっている、と思う方もいるでしょう。
結論から言えば、Webサイトは必要です。ただあるだけなら最小限のコストでよく、成果を求めるなら、制作費の安さではなく事業理解と戦略、使い続けられる設計に投資すべきです。本記事では、不要論が当たっている部分、2種類のサイトの分け方、行動データで情報の配置を見直した事例、制作会社の見極め方を整理します。
この記事を監修した人

AIエンジニア
小洞 映ハユル コボラ
この記事のゴール(読了目安 約10分)
自社サイトに任せる仕事から、必要な投資を判断できる。持つだけのサイトと成果を求めるサイトで費用のかけ方を分け、制作会社の提案を価格ではなく理由で比べられるようになる。
Webサイトは本当に不要か
不要論が広がる3つの背景
不要論が広がる背景には、次の3つがあります。
- SNS: 会社や商品を、SNSで知る人が増えた
- 地図や予約サイト: その中で集客が完結する業態がある
- AI検索: サイトを開かずに答えを得る場面が増えた
どれも、サイトを経由しない接点が増えたという同じ変化です。
結論は必要、分けるのは持ち方
それでも結論は変わらず、Webサイトは必要です。ただ、必要か不要かの二択で考えると判断を誤ります。分けるべきは、ただ存在しているだけの「ある」サイトと、マーケティング戦略の一部として機能する「働く」サイトです。前者に高い費用をかける必要はなく、後者には投資する価値があります。

不要論が当たっている部分
会社案内だけのサイトは埋もれる
会社概要と連絡先が置いてあるだけで、ほかとの違いが見えないサイトは、訪れた人の判断材料になりません。差別化がなく、ただ存在しているだけのサイトは価値が薄れつつあります。
地図やSNSで足りる業態もある
来店型の店舗のように、地図や予約サイト、SNSで見つけてもらい、そのまま来店や予約まで進むなら、サイトの出番は小さくなります。その場合、サイトに任せる仕事は、公式の情報を正しく置いておくことに絞れます。
それでもサイトが要る理由
SNSの情報は流れていく
SNSの投稿は時間とともに流れ、過去の実績やサービスの詳細を整理して置いておけません。比較検討する人がまとめて読める場所として残るのが、サイトの役割です。
比較の最後に確かめられる
SNSや紹介で知った人も、発注や応募の前には「どんな会社か」を確かめに来ます。ここで情報が無い、あるいは古いと、候補から外す理由になります。
AIが会社を知る情報源になる
Google の AI による概要や AI モードは、回答とあわせて参考になるサイトへのリンクを示します。Google 検索セントラル「AI 機能とウェブサイト」は、そこに表示されるための追加の要件や特別な最適化は無いと説明しています。特別な対策より、公開している情報が正確で新しいことが基本です。
「ある」サイトと「働く」サイト
存在を示すためのサイト
「ある」サイトに任せる仕事は、実在する会社だと確かめてもらい、連絡先を知ってもらうことです。
成果を取りにいくサイト
「働く」サイトは、マーケティング戦略の中に置かれ、問い合わせや応募を生むことを任されます。
持つだけなら最小限でいい
目的のない高額制作は避ける
サイトを持つこと自体が目的なら、高い制作費をかける理由はありません。目的が曖昧なまま見た目や機能に費用を積むほど、「かけたのに何も変わらない」が起きます。
独自性は目的にしない
すべての会社に独自性の高いサイトが要るわけではありません。独自性は目指すものではなく、役割と戦略から必要な分が決まるものです。「ある」サイトに載せる中身は、次の5つが基本です。
- 事業内容: 何を、誰に提供しているか
- 会社情報: 所在地など、実在を示す情報
- 連絡手段: 電話やフォームなどの窓口
- 取引の証明: 実績など、信頼の裏づけ
- 更新日: 今も管理されている印
戦略があるなら投資する価値
見た目より獲得の設計
見た目を整える、ブランドイメージを表現する、で止めないようにします。費用をかける先は、問い合わせなどの獲得を意識して、情報の順番と導線が設計されているかです。
戦略の中で役割を持たせる
「サイトをつくること」を目的にしません。事業やマーケティングの戦略を先に立て、その中でサイトが担う役割、つまり誰を、どの段階で、どの行動へ進めるかを決めてから作ります。
事例|データで情報の順番を変えた
ここで紹介するのは、見た目のデザインを変えた事例ではありません。ユーザーの行動データをもとに、重要な情報の優先順位と配置を見直した事例です。
コンバージョンした人を比べた
既存サイトの Google アナリティクスのデータを、コンバージョン(サイト上で成果として計測している行動)に至ったユーザーと、至っていないユーザーに分け、サイト内の回遊や閲覧の傾向を比べました。見えてきたのは、コンバージョンしたユーザーには特定のページやコンテンツがよく見られている、という傾向です。
よく見られた情報を上へ移した
この傾向をもとに、該当するコンテンツを、より上部の目に入りやすい位置へ移しました。
具体と抽象の訴求を両方置いた
あわせて、トップページと「トップページ直下」に置いたのが、具体的な訴求と抽象的な訴求の両方です。
改善を公開した前後で比べると、有効問い合わせ件数は約2.5倍になりました。

成果が出た理由の仮説
判断材料が目に入りやすくなった
コンバージョンしたユーザーがよく見ていた情報は、その人たちが行動を決める判断材料になっていた可能性があります。それを目に入りやすい位置へ移したことで、ほかの訪問者も探しに行かずに同じ材料に触れられるようになった。分析からは、そう考えられます。
訴求を1つに絞らなかった
具体的な訴求と抽象的な訴求を、どちらか一方に絞らず両方置いたことも、成果につながった可能性があります。訪問者によって、反応する言葉の粒度は違うかもしれないからです。ただし、この前後比較だけでは、情報の移動と訴求の配置のどちらがどれだけ寄与したかまでは切り分けられません。
自社で試すときの順番
- 計測を確かめる: 問い合わせを計測できているかを見る。終了済みの古い解析タグが残り、データがたまっていなかったサイトも実際にある
- 2つに分けて比べる: 問い合わせた人としていない人で、閲覧したページを比べる
- 差の大きい情報を上へ: よく見られていた情報を、目に入りやすい位置へ移す
- 同じ条件で前後を比べる: 同じ指標、同じ長さの期間で、改善の前後を比べる
ただし、よく見られていたことが、問い合わせの原因とは限りません。相関と因果は別物です。だから動かして、前後で確かめます。
制作会社は価格で選ばない
事業をどこまで理解しているか
サイトをWeb戦略の一部に置くなら、制作費の安さだけで決めないことです。見るのは、制作担当者が自社の顧客や売り方をどこまで理解しているかです。
提案の理由を説明できるか
提案を受けたら、次の3つを聞いてみてください。
- 構成: なぜその構成にするのか
- 優先順位: なぜその情報を優先するのか
- 獲得: どのように問い合わせにつなげるのか
答えが、自社の事業への理解に基づいているかを見ます。理由を説明できない提案は、別の会社にもそのまま出せる提案です。この観点で選ぶことが、失敗の確率を下げることにつながります。
使い続けられないサイトは死ぬ
更新しにくいと発信が止まる
更新の画面が分かりにくい、1か所直すのに手間がかかる。使い勝手が悪いと、情報を出そうという意欲そのものが下がり、更新されなくなります。
止まったサイトは機能を失う
お知らせや実績が古いまま残ると、訪れた人に「今も動いている会社だろうか」と思わせてしまいます。見られなくなり、更新する理由もさらに薄れる。こうしてサイトは徐々に機能しなくなります。
公開前に更新画面を触る
公開した時点を完成としないことです。公開前に、社内で更新する人が実際に更新画面を触り、誰が、何を、どれくらいの頻度で更新するかを決めておきます。
作る前に決める5つの判断軸
作る前、頼む前に、次の5つを確かめます。答えられない軸が、先に手を付ける場所です。
【プロの視点】要るかより、何を任せるか
「ホームページは不要か」を扱う記事の多くは、SNSとの違いや信頼性といった利点を並べ、「必要です」で締めくくります。結論そのものは間違っていません。ただ、二択で「必要」と答えるだけでは、読んだ人の手元に判断の基準が残りません。
二択で考えると、次の循環が起きやすくなります。必要だから作る。作ったことで満足する。サイトに任せた仕事が無いので、成果が出ない。そして「やっぱり不要だった」に戻る。不要論は、この循環の終点で生まれやすいのです。
見るべきは「サイトが要るか」ではなく、「そのサイトに何の仕事を任せたか」です。任せた仕事が存在を示すことなら、最小限のコストで足ります。問い合わせを生むことなら、投資先は戦略と分析です。費用が妥当かどうかは、金額の大小ではなく、任せた仕事に見合うかで決まります。
裏返せば、高いサイトが悪いのでも、安いサイトが悪いのでもありません。任せた仕事と費用が釣り合っていないサイトが、不要論を生みます。仕事の無いサイトに大きな費用をかければ「無駄だった」になり、成果を求めるサイトを最小限で済ませれば「効果が無い」になります。
明日できる一歩は、自社サイトに任せている仕事を1行で書いてみることです。書けなければ、今のサイトは「ある」サイトです。そこから、投資を増やすか、最小限に絞るかを決めます。

【waltsu視点】作る会社が不要論を語る理由
waltsuは、Webサイトをマーケティング施策として設計・制作する会社です。その会社があえて不要論を持ち出すのは、任せる仕事の無いサイトに高い制作費をかけても、事業は何も変わらないからです。目的が曖昧なまま高額な制作に進むことに疑問を投げかけるのは、作る側が引き受けるべき役目だと考えています。
「働く」サイトの価値は、公開した後にあります。事例で見たように、行動データを見て、情報の順番を変え、結果を確かめる。この試行ができて初めて、サイトは戦略の一部として働きます。試せるのは、公開後に変えられるサイトだけです。
公開時にどれだけ見た目を作り込んでも、情報の配置や訴求を変えにくい作りなら、試行は1回で止まります。更新する人が使いこなせない作りも同じです。だから費用をかける場所を、公開時の見た目から、公開後に変えられる設計と分析へ寄せるべきだと考えます。
これは、作り込むか抑えるかの話ではありません。試せるサイトにだけ投資するという線引きの話です。「ある」サイトなら、最小限で持てば足ります。「働く」サイトに費用をかけるなら、公開後に情報の順番や訴求を変えられることを、発注の前提にしてください。
明日の一歩は、次に見積もりを取るとき、「公開後に、情報の配置や訴求をどこまで変えられる作りですか」と1つだけ聞くことです。

よくある質問
SNSだけで集客できますか?
来店や予約までがSNSや地図の中で完結する業態なら、できる場合があります。ただし、比較検討に時間のかかる商材や採用では、詳細と実績をまとめて確かめられる場所が必要です。SNSで知ってもらい、サイトで確かめてもらう分担で考えると整理しやすくなります。
小さな会社にもサイトは必要?
必要です。ただし規模にかかわらず、任せる仕事が存在を示すことだけなら、最小限のコストで足ります。問い合わせを増やしたい段階になってから、戦略とあわせて投資を考えても遅くはありません。
最低限、何を載せればいい?
事業内容、会社情報、連絡手段、実績など取引の証明になる情報、更新日の5つが基本です。載せる量を増やすより、古い情報を残さないことを優先してください。
制作費はいくらかけるべき?
金額から決めるのはおすすめしません。サイトに任せる仕事を先に決め、その仕事で何が増えれば費用に見合うかから逆算します。見積もりを比べるときは、金額の差より提案の理由の差を見てください。
作ったのに問い合わせが来ないのは?
まず、サイトに任せた仕事が決まっているか、問い合わせを正しく計測できているかを確かめます。そのうえで、問い合わせた人が見ていた情報が目に入りやすい位置にあるかを見直します。見た目を作り直す前に、情報の順番を疑ってみてください。
この記事の要点
・Webサイトは必要。ただし「ある」サイトと「働く」サイトを分けて考える
・持つだけなら最小限、成果を求めるなら戦略に基づいて投資する
・制作会社は価格ではなく、事業理解と提案の理由で選ぶ
・使い続けられないサイトは、徐々に機能しなくなる
まとめ
Webサイトを作る会社として「サイトは不要なのでは」と問いかけました。答えは「必要」です。ただし分けて考えるべきなのは、存在を示す「ある」サイトと、成果を取りにいく「働く」サイトでした。
持つだけなら最小限のコストで足ります。成果を求めるなら、制作費の安さではなく、事業理解と戦略、使い続けられる設計に費用をかけます。制作会社の提案は構成と情報の優先順位の理由で比べ、公開前には更新する人が使えるかを確かめてください。
自社のサイトにどんな仕事を任せ、どこまで費用をかけるかで迷う場面が出てきたら、waltsuが役割の整理から、マーケティング施策としてのサイトの設計・制作までご支援します。
