・AIでWebサイトを作りたい
・制作費を抑えたいが品質も欲しい
・AIなら制作会社は不要か気になる
生成AIの進化で、「AIに指示するだけでWebサイトが作れる」時代になりました。実際、デザインもコードも短時間で生成でき、サイトを形にするハードルは大きく下がっています。では、制作会社やデザイナーはもう不要なのでしょうか。
先にお伝えしておきたいのは、AIで簡単になったのは「サイトを作ること」であって、「良いサイトを作ること」まで簡単になったわけではないということです。目的の設定、コンテンツ、情報の順番、ファーストビュー、ブランドの表現。成果を左右するこれらの意思決定は、AIの登場後も残り続けます。本記事では、実際のWeb制作工程をもとに、AIで速くなった部分と難しいままの部分、事前設計の重要性、AIとデザイナーの役割分担、これからのサイト制作の進め方まで解説します。
この記事のゴール(読了目安 約9分)
AIサイト制作の実力と限界を工程レベルで理解し、どこまでAIに任せ、どこに人(プロ)を入れるべきかを、自社のサイトの重要度に応じて判断できるようになる。
AIでWebサイトは作れるか
短時間で形にできる
結論からいえば、作れます。やりたいことを文章で伝えれば、ページ構成・文章・デザインを含むサイトのベースが短時間で生成されます。従来なら数週間かかっていた「とりあえず形にする」までが、数時間から数日に縮みました。
コードもデザインも生成できる
生成されるのは見た目だけではありません。HTMLやCSSといったコードも出力され、配色・フォント・レイアウトといったデザイン要素も、それらしい水準でまとまります。「白紙から作る」工程は、確実にAIの領域になりつつあります。だからこそ問題は、その先で何が残るかです。

サイト制作は簡単になり続けてきた
実は「サイト制作が簡単になる」流れは、AIが初めてではありません。かつてはすべて手作業でコードを書いていたものが、テンプレートやCMSの普及で手作業が減り、ノーコードツールの登場で専門知識がなくても作れるようになりました。生成AIは、この流れをさらに加速させた存在です。
つまりこの十数年、「作る技術」は一貫してコモディティ化してきました。それでも制作会社やデザイナーの仕事がなくならなかったのはなぜか。作ることと、成果の出るものを作ることは、別の仕事だからです。
「良いサイト」は簡単ではない
良いサイトの条件は、見た目の綺麗さではありません。以下の表にまとめます。
AIが得意なのは最後の「形にする」であり、その手前の意思決定は残ります。顧客が何を知りたくて訪れるのかという理解の整理には、カスタマージャーニーの考え方が役立ちます。詳しくは別記事で解説しています。
事前設計が制作速度を決める
「AIで作れば速い」は半分だけ正しく、実際の速さを決めるのは事前設計です。waltsuの制作現場でも、サイトマップとトップページの構成を先に詰めてからAIでの制作に入ったことで、制作全体が大幅に速くなった実例があります。
事前に決めるのは、サイトマップ(どんなページが必要か)、各ページの役割(そのページで訪問者に何をしてもらうか)、載せるコンテンツ、そして優先順位です。ここが曖昧なままAIに作らせると、生成は一瞬でも、「なんか違う」の修正指示が延々と続きます。速いのはAIではなく、迷いのない指示です。
サイトマップを詰めるときにwaltsuが軸にしているのは、ページ数ではなく「目的の情報へ3クリック以内で到達できるか」という距離です。情報量の多いBtoBサイトでは、ファーストビュー、イベント、サービス、メンバー、問い合わせの優先順位をこの基準で並べ直しました。距離で示すと、発注側にも改善の価値が伝わります。
コンテンツが先、デザインは後
制作の順番にはセオリーがあります。コンテンツ(何を載せるか)→構成(どの順番で見せるか)→デザイン(どう見せるか)。この順番には理由があります。

デザインは、載る情報の量と種類に合わせて作られるものだからです。文章が長いのか短いのか、写真は何枚あるのか、表は入るのか。情報量が変わればレイアウトの前提が変わります。デザインを先に作って後からコンテンツを流し込むと、余白が崩れ、窮屈になり、間延びします。AIで作る場合もこの原則は変わりません。
なぜ順番変更で崩れるのか
「コンテンツの順番を入れ替えるだけ」の修正が、なぜ大ごとになるのか。デザインは要素の並びを前提に、視線の流れ・余白・強弱が設計されているためです。
先頭に来る想定で大きく作られた要素が中段に移れば、そこだけ悪目立ちします。逆に中段想定の要素が先頭に来れば、第一印象として弱すぎます。1箇所の入れ替えは、その前後だけでなくページ全体のバランス調整をやり直す作業を連れてきます。だからこそ、前章の「コンテンツと順番を先に固める」が効くわけです。
ファーストビューは特に難しい
サイトの中で最も工数がかかるのが、ファーストビュー(ページを開いて最初に見える範囲)です。waltsuの制作でも、ここに最も時間を使います。
理由は、担っている仕事が多いからです。第一印象を決め、何のサイトかを一瞬で伝え、ブランドの世界観を表現し、次へ進む動線を示す。この全部を、限られた面積と情報量でやりきる必要があります。とくに難しいのが、抽象的なブランドキーワードをビジュアルへ変換する工程です。たとえば「フィールド」という言葉をブランドの核に据えたとき、それを風景写真にするのか、図形の広がりで表すのか、余白で感じさせるのか。言葉の解釈を選び、意味を持たせる判断は、生成の速さとは別の仕事です。
提案の場でも、ダミー画像のままでは相手の反応が弱く、高品質な写真素材や独自のモーションを用意して初めて評価が変わりました。だからwaltsuは、受注前でもすべてのページを均等に作り込むのではなく、ファーストビューと主要な導線に工数を集中させています。
AIとデザイナーの役割分担
ここまでを役割分担として整理します。以下の表にまとめます。
AIはベースを速く作り、決まった型を下層ページへ展開することに優れています。人が担うのは、全体を通して見たときの一貫性と、「自社らしいか」という判断です。AIと人の役割分担の考え方そのものは、別記事で解説しています。
サイト制作は二極化する
この構図が進むと、サイト制作は二極化します。名刺代わりのサイトや期間限定ページのような簡易サイトは、AIで速く安く作る方向へ。事業の成果を左右する主力サイトは、設計とデザインに徹底的にこだわる方向へ。
価値を失うのは中間です。「制作会社に頼んだが、テンプレートに流し込んだだけ」のような、速さでAIに勝てず、こだわりでプロに届かない中途半端な制作は、選ばれる理由がなくなっていきます。発注側にとっては、自社のサイトがどちらの性質なのかを最初に決めることが、これまで以上に重要になります。
AI時代のサイト制作フロー
以上を踏まえた制作の進め方は、次の6ステップです。
- STEP1 目的を決める: 誰に、何をしてもらうためのサイトかを定義する
- STEP2 顧客を理解する: 訪問者が知りたいこと・不安に思うことを一次情報から整理する
- STEP3 コンテンツを固める: 載せる情報と見せる順番を、デザインより先に確定する
- STEP4 AIで制作する: 確定した設計をもとに、ベースを高速で生成・展開する
- STEP5 人が仕上げる: ファーストビュー、整合性、ブランド表現を調整する
- STEP6 公開後に改善する: データを見て、コンテンツと導線を更新し続ける
ポイントは、STEP1〜3に時間を使うほどSTEP4が速くなる、という関係です。AIの導入は、企画・設計の省略ではなく、企画・設計に時間を回すための手段と捉えてください。
【プロの視点】60点は速い、100点が難しい
AIサイト制作の実力を一言でいえば、「0点から60〜70点までが劇的に速くなった」です。問題は、その先です。

80点、90点、100点へ上げる作業の中身は、情報設計の見直し、余白の調整、文字の大きさと強弱、視線の流れ、ページ間の整合性、細部の作り込み。つまり生成ではなく判断と調整の連続で、ここはAIの速さがほとんど効きません。むしろ、生成をやり直すたびに別の箇所が変わってしまい、詰めの工程ではAIが遠回りになる場面すらあります。
waltsuの現場でも、「余白が気持ち悪い」「この書体では違う」といった感覚を言葉にしてAIへ伝え直すより、人が直接手を入れた方が速い場面が多くありました。AIの効率は生成の速さだけでなく、修正の意図を言語化する時間まで含めて測る必要があります。
だからこそ、プロの仕事は最後の30点に集まっていきます。60点で十分なサイトならAIだけで完結させる。100点が必要なサイトなら、最初から最後の30点を設計に織り込む。「どこまでの点数が必要なサイトか」を先に決めることが、AI時代の発注判断の出発点です。
【石井 視点】AIは参考サイトに引っ張られる
waltsuの制作現場で実際にあったのが、「参考サイトを読み込ませれば、近いものが出てくるはず」という想定が外れたケースです。

参考サイトをAIに渡すと、たしかに見た目は似たものが生成されます。ところが出てきたものは、参考サイトの表層に引っ張られ、本来表現したかった自社のブランドからズレていました。理由を突き詰めると、AIが模倣できるのは配色やレイアウトといった「見た目」であって、その参考サイトがなぜその見た目を選んだのかという意図までは汲めないためです。
そこで工程を変えました。ブランドの言葉を定義し、それをどうビジュアルに変換するかを人が先に決めてから、確定した設計をAIに渡す。この順番にしてからは、生成のやり直しが減り、AIの速さがそのまま活きるようになりました。設計を先に固めるほどAIでの展開が速くなり、同じ期間で試せる案の数も増えます。AIを活かす鍵は、AIへの指示の上手さより、渡す前の設計にあります。
よくある質問
AIだけでWebサイトは作れますか?
作れます。ページ構成・文章・デザイン・コードまで生成でき、公開までAIだけで完結させることも可能です。ただし、目的設計・コンテンツの中身・ブランド表現まで任せると品質は頭打ちになります。
AIサイト制作は制作会社より安いですか?
制作費だけ見れば安く抑えられます。ただし、設計やコンテンツが曖昧なまま作ると、修正の繰り返しや成果の出ないサイトという形でコストが後から発生します。安さの比較は、成果まで含めて行ってください。
AIでプロ並みのデザインは作れますか?
60〜70点の水準までは短時間で到達できます。一方、ブランド表現・情報設計・細部の整合性といった残りの部分は、人の判断と調整が必要です。プロの価値はこの最後の部分に集まりつつあります。
AIサイト制作のデメリットは?
参考にした既存デザインへ引っ張られやすいこと、どこの会社でも使えそうな無難な表現になりやすいこと、細部の調整を繰り返すと別の箇所が変わってしまうことが挙げられます。ブランドの独自性が重要なサイトほど、人の関与が必要です。
制作会社へ依頼すべきサイトはどんなサイトですか?
事業の成果に直結する主力サイトです。集客・採用・ブランドの中核を担うサイトは、目的設計からデザインの詰めまで人が関わる価値があります。簡易な告知ページなどは、AI中心で十分な場合が多いといえます。
まとめ
この記事の要点
・AIで簡単になったのは「作ること」。良いサイトに必要な意思決定は残る
・速さを決めるのはAIではなく事前設計。コンテンツが先、デザインは後
・AIは0→60点が速く、80→100点は判断と調整の仕事。プロの価値は最後の30点に集まる
・参考サイトの表層に引っ張られる前に、ブランドの言葉とビジュアル変換を人が決める
AIによって、Webサイトを作る技術はコモディティ化していきます。それでも、何を伝えるか、誰に伝えるか、どの順番で伝えるか、どんな印象を与えるか、何を最も目立たせるか——という意思決定はなくなりません。AI時代のWeb制作で価値が上がるのは、制作力だけでなく設計力です。
まずは自社のサイトが「60点で十分なサイト」か「100点が必要なサイト」かを決め、後者であれば目的・コンテンツ・構成を固めてからAIを使ってください。「AIで速く作りたいが、ブランドや成果は妥協したくない」「戦略からコンテンツ、サイト設計、公開後の改善まで通しで考えたい」という場合は、waltsuがWebサイト制作・リニューアルの設計段階からご支援します。
