・Jevを使いたいが、データを社外に出してよいか迷っている
・本家のAPI以外に、どんな置き場所があるのか知りたい
・ローカルとクラウドの費用と手間を比べてから決めたい
判断のためのモデルJevは、TypeSafe AIのAPIを呼んで使うのが基本です。ところが2026年9月から10月にかけて、同じ形のリクエストを受け付ける受け皿が相次いで登場しました。手元のマシンで動かすOllayaと、CloudflareがWorkers AIで公開したClefです。
3つは同じ質問の形で呼べますが、料金・データの行き先・渡せる入力が違います。どこで動かすかは性能表ではなく、データを外に出せるかと、自社の日本語で測った結果で決めます。本記事では3つの違い、公表された精度と速さの読み方、日本語の扱い、決める順番を整理します。
この記事のゴール(読了目安 約8分)
Jevの本家API・Ollaya・Clefの違いを説明でき、データの扱いと入力の種類、機材の有無から、判断モデルをどこで動かすかを決められるようになる。
Jevを本家以外で動かすとは
同じ形で呼べる受け皿
Jevは文章ではなく、選択・点数・真偽の確率を返すモデルです。仕組みやLLMとの違いは別記事で解説しています。OllayaとClefはどちらも、Jevと同じ形のリクエストとレスポンスを扱えると公表しています。Jev向けに書いたコードを、接続先を変えるだけで流用できるのが共通点です。
3つの置き場所
置き場所で分けると、次の3つになります。
- 本家API: TypeSafe AIのサーバーでJevを呼ぶ
- ローカル: Ollayaで公開モデルを自社のマシンに置いて動かす
- Cloudflare: Workers AI上のClefを呼ぶ
ただし、後の2つで動くのはJev本体ではなく、Jevに似た別のモデルです。同じ質問を投げても、同じ答えが返るとは限りません。

3つの選択肢を並べる
2026年10月時点の公式情報を並べると、次のとおりです。
ざっくり言えば「Ollayaはネットワーク面で安全で無料、性能はGPU次第」「Clefは使いやすいがJevより少し高い」です。公式の数字で確かめると、前半はおおむね合っています。一方でClefの単価はJevの約5.7倍で、「少し」では収まりません。ただし絶対額は小さく、後で件数を入れて計算します。
Ollayaの仕組み
Ollayaは、ローカルでLLMを動かすOllamaにならって作られた、判断モデル用の実行環境です。開発者はMert Cobanov氏で、ライセンスはApache-2.0、最新版は10月2日公開の0.9.0です。独立したプロジェクトで、OllamaともTypeSafeとも関係はありません。
手元で常駐サーバーを起動し、モデルを名前で取り寄せて動かします。TypeSafe公式のPython SDK(0.7.1)は、接続先の環境変数を変えるだけでそのまま動くとされています。対応環境は次のとおりです。
- Mac: Apple製チップを積んだmacOS 14以降。一部のモデルはMac内蔵のGPUで動く
- Windows: 10と11の64ビット版。NVIDIAのGPUを使える
- Linux: x86-64とARM64。GPUを使えるのはx86-64だけ
- その他: WSL 2とDockerにも対応
NVIDIAのGPUはドライバR525以降が条件です。GPUが無くても全モデルがCPUで動きますが、遅くなります。ローカルで動かすこと自体の利点と注意点は、別記事で解説しています。
Ollayaの精度と速さ
Ollayaの公式サイトは、判断の正答率と速さを並べて公開しています。速さはRTX 4090で、5問を1回のリクエストで聞いたときの中央値です。
- TypeSafe Jev: 正答率0.738、236〜276ミリ秒(第三者による本家APIの計測、通信込み)
- Winnow-E4B: 0.722、89ミリ秒(推奨モデル)
- Kev(9B): 0.722、498ミリ秒
- Cygnet(12B): 0.683、202ミリ秒
- Laya英語版: 0.361、10ミリ秒
推奨モデルは、Jevに0.016届かない正答率を、約3分の1の時間で返すという結果です。ただし、同じ条件でそろえた比較ではありません。Jevの正答率は別モデルの報告書から、速さは第三者の計測から引いたもので、サイト自身も桁で比べるよう注記しています。

Clefの仕組み
Clefは、Cloudflareが10月1日にWorkers AIで公開した判断モデルです。同社のチームが初めて自ら学習させたモデルで、27BのClefと9BのClef-flashがあります。重みもApache 2.0でHugging Faceに公開されました。
「使いやすい」の中身は、具体的には次の3つです。
- サーバーが要らない: Workersのコードからバインディングで呼べ、外からはREST APIで呼べる
- 画像を渡せる: 1回のリクエストに画像を4枚まで添えられる
- 移行が軽い: 接続先とモデル名を変えればJevから切り替えられると同社は説明している
1回に聞ける質問は64問まで、文脈の上限は65,536トークンです。Cloudflareのアカウントは要りますが、GPUの用意は要りません。
Clefの料金を比べる
1判断を約400トークンとし、入力だけで月の費用を計算しました。
単価は2026年10月時点で、Clef-flashは入力100万トークンあたり0.09ドルです。Clefのページに載っているのは入力の単価だけです。Workers AIには1日1万ニューロンの無料枠があり、Clefなら1日約1,100判断ぶんにあたります。月100万件でも、JevとClefの差は約80ドルです。1判断あたりの費用の出し方は別記事で解説しています。
日本語はまだ測られていない
3つとも、日本語での正答率は公表されていません。分かっているのは次の範囲です。
- Jev: 英語が主な学習言語で、日本語を含むCJKも扱えるが同等ではないと公式が明記
- Ollaya: Layaの多言語版が100以上の言語に対応。日本語の正答率の記載は無い
- Clef: 公式ページにもモデルカードにも、対応言語の記載が無い
日本語の業務で使うなら、自社の実データで測るまで結論は出せないのが現状です。
置き場所の決め方
性能を比べる前に、次の3つで候補を絞ります。
- データを社外に出せるか: 出せないならOllayaしか残らない
- 入力に画像があるか: あるならClefか、Ollayaの画像対応モデルが候補
- GPUを用意できるか: できないなら、Ollayaは小さいモデルに限られる
どれにも当たらないなら、評価の材料が最も多い本家APIから始めるのが手堅い選択です。
【プロの視点】速さは測った場所の数字
判断モデルの比較は、ミリ秒の数字で語られがちです。ところが同じJevの速さが、出どころで大きく違います。TypeSafe自身は70〜500ミリ秒、Ollayaが引いた第三者の計測は236〜276ミリ秒、Cloudflareの計測では中央値524.1ミリ秒でした。
逆向きの例もあります。Clef-flashはCloudflareの計測で中央値38.8ミリ秒ですが、OllayaがRTX 4090で動かすと5問で532ミリ秒です。同じモデルでも、どこで誰が測ったかで桁が変わるのです。
数字は人の手を渡るたびにも誤りが入ります。社内に回ってきたOllayaの画面の写しではRTX 4070と読めましたが、公式サイトの表記はRTX 4090でした。型番が1つ違えば、速さの見込みもずれます。
見るべきは他社の表ではなく、自社の回線と機材に自社の文面を投げた結果です。明日やる最初の一歩は、手元の比較表の数字すべてに、誰がどの機材で測ったかを書き足すことです。

【waltsu視点】乗り換えられる形で始める
3つが同じ形で呼べることの価値は、安さや速さより試しやすさにあります。接続先を変えるだけで同じ質問を別のモデルに投げられれば、比べる手間が減ります。
waltsuが編集の軸にしているのは、試行回数を増やすことです。1つの置き場所に決め打ちすると、比べるたびに作り直しが生じ、試す回数が減ります。質問の書き方を自社の資産にして、置き場所は差し替えられる部品として扱うのが、この局面での組み方です。Jevで自社ブログを採点した事例は別記事で紹介しています。
明日やる最初の一歩は、過去の日本語の問い合わせを50件選び、人が付けた正解と一緒に保存しておくことです。この50件があれば、どの置き場所を試すときも同じ物差しで答え合わせができます。

よくある質問
OllayaでJevそのものは動く?
動きません。Ollayaが動かすのは、Jevと同じ形で答える他の開発者の公開モデルです。
Ollayaは無料で使える?
本体はApache-2.0で、従量課金もありません。ただしGPU付きの機材と電気代は自社の負担で、モデルごとのライセンスも確認が要ります。
ClefはJevより高い?
2026年10月時点で、Clefの入力単価はJevの約5.7倍、Clef-flashは約2.1倍です。月100万件でも差は数十ドルの範囲です。
日本語で使える?
3つとも日本語の正答率は公表されていません。自社の日本語データを、人の判断と突き合わせてから決めます。
どれから試せばいい?
データを社外に出せないならOllaya、出せるなら本家APIかClefです。質問を同じ形で書いておけば、後から置き場所を替えても書き直しは要りません。
この記事の要点
・OllayaとClefはJevと同じ形で呼べるが、動くのはJev本体ではない
・データを出せないならOllaya、画像を扱うならClefが候補
・Clefの単価はJevの約5.7倍。ただし月100万件でも差は約80ドル
・日本語の正答率は3つとも未公表。自社のデータで測ってから決める
まとめ
Jevを本家以外で動かす選択肢に、手元で動かすOllayaと、Cloudflareが公開したClefが加わりました。どちらもJevと同じ形で呼べますが、動くのは別のモデルで、データの行き先と料金、入力が違います。
決める順番は、データを外に出せるか、画像があるか、GPUを用意できるかで候補を絞り、最後に自社の日本語データで測ることです。判断モデルの置き場所選びや、比べるための評価データづくりに迷う場面が出てきたら、waltsuが業務の切り分けから検証の設計までご支援します。
