・SynthIDの仕組みを知りたい
・AI画像を見分けたい
・AI生成物の管理ルールを作りたい
生成AIで作られた画像・動画・音声・文章が増え、「これは人が作ったのか、AIが作ったのか」を見た目で判断することが難しくなっています。そこで注目されているのが、Google DeepMindが開発した「SynthID(シンスID)」です。
SynthIDは、AIが生成したコンテンツに人の目には見えない電子透かしを埋め込み、後から専用の技術で検出できるようにする仕組みです。当初はGoogleの画像生成AI向けに開発されましたが、現在は動画・音声・テキストへ対象が広がり、2026年5月にはOpenAIも自社の生成画像にSynthIDを採用すると発表しました。GoogleのAI透かしという段階から、AI生成コンテンツの来歴を示す技術の一つへ広がり始めています。
ただし、SynthIDは「AIか人間かを100%判定する技術」ではありません。コンテンツの出所を確認するための一つのシグナルです。本記事では、SynthIDの意味・仕組み、対応コンテンツ、確認方法、C2PAとの違い、限界、企業が知っておくべきことまで解説します。
この記事のゴール(読了目安 約9分)
SynthIDを「AI生成を100%判定する技術」と誤解せず、AI生成コンテンツの出所を確認するための一つの仕組みとして理解し、企業のAIコンテンツ管理にどう活かすか判断できるようになる。
SynthIDとは
Google DeepMindが開発
SynthIDは、Google DeepMindが開発したAI生成コンテンツ向けの電子透かし技術です。2023年に画像向けとして発表され、その後、動画・音声・テキストへ対象を拡大しています(Google DeepMind「SynthID」)。Googleは2026年5月のI/Oで、SynthIDをこれまでに1,000億超の画像・動画と、6万年分にあたる音声へ適用したと述べています。

目に見えない電子透かし
一般的な透かし(ロゴやコピーライト表示)は目に見えますが、SynthIDはコンテンツのデータそのものに、人が知覚できないシグナルを埋め込みます。見た目や音質・文章の品質を損なわず、後から専用の検出技術で「SynthIDが埋め込まれているか」を確認できる仕組みです。
なぜSynthIDが必要?
AI生成物が増えている
文章、画像、動画、音声のいずれも、生成AIで短時間・低コストに作れるようになりました。
本物との区別が難しい
写真と区別がつかないAI画像、実在人物の声を模した音声、実際の映像のような動画が生成できる現在、「見た目から本物かどうかを判断する」ことは難しくなっています。
出所の透明性が必要
偽情報、なりすまし、権利侵害を防ぐには、コンテンツが「どこから来たのか」を確認できる仕組みが必要です。SynthIDは、その透明性を支える技術の一つとして位置づけられています。
SynthIDの仕組み
基本は3ステップです。①生成時に埋め込む: 対応するAIがコンテンツを生成する際、データの中にシグナルを組み込む。②人には見えない: 画像・音声・文章の品質は変わらず、通常の利用では気づかない。③専用技術で検出する: 検出ツールへコンテンツを渡すと、SynthIDの有無を判定する。
メディアの種類によって方式は異なります。画像・動画では画素(ピクセル)レベルにシグナルを埋め込み、圧縮やフィルター、切り抜きなどの編集を経ても一定程度残るよう設計されています。音声では、音の波形データに人が知覚できない形で埋め込む仕組みです。テキストでは、文章を生成する際の単語選択の確率(ロジット)を調整する方式で、文章の品質を大きく変えずに統計的なパターンを埋め込みます。この方式はオープンソース化されており、実装と技術的な説明が公開されています(Google「SynthID: 透かしを入れてLLMで生成されたテキストを検出するためのツール」)。
SynthIDは消えない?
SynthIDの特徴は、編集後も残りやすいことです。画像の圧縮、リサイズ、フィルター適用、切り抜きなどの一般的な編集を経ても検出できる場合があります。ここが、ファイルのメタデータに情報を付ける方式との大きな違いです。メタデータは、スクリーンショットの撮影やファイル変換で失われやすいためです。
ただし、完全に消えないわけではありません。大幅な改変では検出できない場合があり、メディアごとに耐性も異なります。「残りやすい」であって「絶対に消えない」ではない、と理解してください。
SynthIDを確認する方法
Geminiで確認する
Googleは、Geminiアプリで画像をアップロードし、Googleの対応AIで生成・編集されたものかを確認できる機能を提供しています。
検証ツールを使う
Googleは「SynthID Detector」という検証ポータルを発表しており、対応するコンテンツのSynthID有無を確認できます。またOpenAIも2026年5月、自社生成コンテンツについてC2PAとSynthIDの両方のシグナルを判定する公開検証ツールをプレビュー公開しました(OpenAI「より安全で透明性の高いAIエコシステムに向けて、コンテンツ来歴の取り組みを前進」)。GoogleはさらにContent CredentialsとSynthIDの検証を検索やChromeへ広げるとしています。
確認できる対象に注意する
いずれの検証ツールも、確認できるのは「そのツールが対応するAIで生成されたか」です。すべてのAI生成物を判定できるわけではありません。
どのAIで使われている?
Google製品では、Gemini(画像・テキスト)、Imagen(画像)、Veo(動画)、Lyria(音楽)、NotebookLM(音声)などで利用されています。

そして2026年5月19日、OpenAIがChatGPT・Codex・OpenAI APIで生成される画像にSynthIDを組み込むと発表し、7月31日には対応音声へも拡大しました。同じ日にGoogleも、OpenAI・Kakao・ElevenLabsがSynthIDを採用すると発表しています(Nvidiaは前年に採用済み)(Google「I/O 2026: Welcome to the agentic Gemini era」)。SynthIDは、Google製品の透かしから、複数のAI企業が採用する来歴技術へ広がり始めています。
C2PAとの違い
SynthIDと並んで語られるのが「C2PA」です。以下の表にまとめます。
どちらか一方を選ぶものではありません。OpenAIも「C2PAのような標準、SynthIDのような耐久性のある透かし、検証ツールを組み合わせる多層的なアプローチ」を採っています。複数の来歴シグナルを組み合わせて信頼性を判断するのが基本です。
SynthIDで分かること・分からないこと

SynthIDが検出されれば、それは「対応するAIシステムで生成・編集されたことを示す手がかり」です。画像の一部が生成された場合、その箇所を確認できるケースもあります。
しかし、SynthIDだけでは分からないことがあります。以下の表のとおりです。
企業が知っておくべきこと
- 生成元を記録する: どのAIで、いつ、誰が生成したかを社内で記録する。透かしがあっても、自社の管理記録は別に必要
- 透かしを消さない: SynthIDやC2PA情報を意図的に除去・改変することは、透明性の観点から避ける
- 表示ルールを確認する: 広告・コンテスト・媒体・業界によって、AI生成の開示が求められる場合がある。EUのAI規制など海外ルールも確認する
- 社内ルールを決める: AI生成コンテンツの公開可否、確認フロー、来歴情報の扱いを生成AIガイドラインに含める
【プロの視点】判定ツールでなく来歴のシグナル
SynthIDの解説では、「AI画像に透かしを入れる→AI画像を判別できる」という説明になりやすいものです。しかし実務では、SynthIDを「AIか人間かを当てるツール」として使わないことが重要です。
SynthIDが検出された→対応AIで生成・編集された手がかり。検出されなかった→人間が作ったとは限らない(SynthIDを使わないAI、非対応コンテンツ、検出できないケースがある)。この非対称性を理解しないと、「SynthIDがないから本物」という誤った判断につながります。SynthIDは、C2PA、メタデータ、公開元、作成ツールなどと組み合わせて来歴を確認するための一つのシグナルです。
【waltsu視点】見た目から来歴を見る時代へ
これまで、コンテンツの信頼性は「本物っぽいか」「加工されていないか」と見た目から判断してきました。しかしAIが本物そっくりのコンテンツを生成できるようになるほど、見た目での判断は成立しなくなります。

これからは、「見た目が本物か」より「どこから来たコンテンツなのか」を確認する時代です。SynthID、C2PA、メタデータ、公開元、作成ツール——複数の来歴情報を組み合わせて、コンテンツがどのように作られたかを見る。これは受け手側だけでなく、発信する企業側にも当てはまります。自社がAIで制作したコンテンツの来歴を隠さず、記録し、必要に応じて開示できる状態にしておくこと。AI生成コンテンツの来歴を「隠すもの」ではなく「示しながら正しく扱うもの」として設計することが、AI時代の企業の情報発信における信頼の前提になります。生成AIガイドラインとAI生成物の著作権については、それぞれ別記事で解説しています。
よくある質問
SynthIDとは簡単にいうと?
Google DeepMindが開発した、AI生成コンテンツに人の目に見えない電子透かしを埋め込み、後から検出できるようにする技術です。画像・動画・音声・テキストに対応しています。
SynthIDは人の目で見えますか?
見えません。コンテンツの品質を変えずにデータへ埋め込まれ、専用の検出技術で確認します。
SynthIDを消すことはできますか?
一般的な編集(圧縮・リサイズ・フィルター・切り抜き)を経ても残りやすく設計されています。ただし大幅な改変では検出できない場合もあり、完全に消えないわけではありません。
AI生成画像なら必ずSynthIDが入っていますか?
入っていません。SynthIDを採用しているのはGoogle、OpenAI(2026年5月以降の対応画像)など一部のAIで、採用していない生成AIも多くあります。SynthIDが検出されないからといって人間が作ったとは断定できません。
SynthIDとC2PAの違いは?
SynthIDはコンテンツそのものに見えない透かしを埋め込み、編集後も残りやすい技術です。C2PAはコンテンツに作成ツールや編集履歴などの来歴情報を付与する業界標準で、より詳しい情報を確認できますが、変換で失われやすい面があります。併用が基本です。
まとめ
この記事の要点
・SynthID=Google DeepMind開発の見えない電子透かし。画像・動画・音声・テキストに対応し、編集後も残りやすい
・2026年5月にOpenAIも採用。Googleの技術からAI生成コンテンツの来歴技術の一つへ
・SynthIDあり=対応AIで生成された手がかり。なし=人間が作った、ではない。真偽・著作権も判断できない
・C2PAと併用し、複数の来歴シグナルで判断する。企業は生成元の記録・透かしの保持・表示ルール・社内ルールを整える
SynthIDは、Google DeepMindが開発した、AI生成コンテンツに目に見えない電子透かしを埋め込む技術です。画像から動画・音声・テキストへ対象を広げ、2026年にはOpenAIをはじめ複数のAI企業が採用を表明し、AI生成コンテンツの来歴を示す技術の一つになりつつあります。
ただし、SynthIDは「AIか人間かを完全に判定する技術」ではありません。検出されれば対応AIで生成された手がかりになりますが、検出されなくても人間が作ったとは限らず、内容の真偽や著作権も判断できません。コンテンツの出所を確認するための一つのシグナルとして、C2PAやメタデータと組み合わせて使うのが基本です。
AIによって本物そっくりのコンテンツを作れるようになるほど、「見た目が本物か」より「どこから来たコンテンツか」を確認する重要性が高まります。企業も、自社のAI生成コンテンツの来歴を記録し、透かしを保持し、表示ルールと社内ルールを整えておくことが、AI時代の情報発信の信頼につながります。「生成AIで画像・動画・コンテンツを制作しているが、公開時のルールや権利・透明性の管理方法が整理できていない」という場合は、waltsuが生成AIガイドラインとAIコンテンツ制作ルールの設計からご支援します。
