・情プラ法の意味を知りたい
・自社サービスは対象?
・誹謗中傷は削除される?
「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」という名前をニュースで見たものの、内容が分からない、旧プロバイダ責任制限法と何が違うのか、自社サービスやSNS運用に影響があるのか——という疑問を持つ方は多いものです。
情プラ法は、旧プロバイダ責任制限法を改正・改称し、2025年4月1日に施行された法律です。SNS等で誹謗中傷などの権利侵害情報が短期間に拡散する状況を踏まえ、大規模なプラットフォーム事業者に対し、権利侵害情報への対応の「迅速化」と、運用状況の「透明化」を求めています。
先にお伝えしておきたいのは、情プラ法は「SNS上の違法な投稿を国が直接削除する法律」でも「申出があれば必ず削除される法律」でもないということです。削除そのものを一律に義務付けるのではなく、削除申出を受け付け、調査し、速やかに判断し、結果と理由を通知し、基準と運用状況を公開する——つまり「削除判断のプロセス」を迅速・透明にする法律です。本記事では、情プラ法の目的・内容、旧法との違い、対象事業者、削除申出の流れ、利用者・企業への影響まで解説します。
この記事を監修した人

デザイナー
石井 裕佳イシイ ユカ
この記事のゴール(読了目安 約10分)
情プラ法を「投稿を規制する法律」と単純化せず、権利侵害情報への対応を迅速・透明にする制度として理解し、自分や自社にどのような関係があるかを判断できるようになる。
情プラ法とは
2025年4月に施行された
情プラ法は、2024年5月に改正法が成立し、2025年4月1日に施行されました(総務省「令和6年 プロバイダ責任制限法の一部を改正する法律(概要)」)。インターネット上の権利侵害情報への対処に関する日本の基本的な法律です。

旧法を改正・改称した法律
情プラ法は、新しく作られた法律ではなく、いわゆる「プロバイダ責任制限法」を改正し、名称を変更したものです。旧法の内容(プロバイダの損害賠償責任の制限、発信者情報の開示)は維持されたうえで、大規模プラットフォーム事業者に対する新しい義務が加わりました。
正式名称
正式名称は「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(平成13年法律第137号)です(e-Gov法令検索「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」)。略称として「情報流通プラットフォーム対処法」「情プラ法」が使われています。
なぜ作られた?
誹謗中傷が問題化した
SNSの普及によって、誹謗中傷、名誉毀損、プライバシー侵害などの投稿が短期間に広く拡散し、深刻な被害につながる事例が社会問題になりました。
削除対応に課題があった
被害者がプラットフォームへ削除を申し出ても、いつ判断されるのか、なぜ削除されないのか、どんな基準で判断しているのかが分かりにくい、対応が遅い、という課題がありました。
透明性が求められた
プラットフォームがどのような基準で、どれだけの削除対応を行っているのかが外部から見えにくく、運用の透明性が求められるようになりました。
旧法との違い
両者の違いを整理します。以下の表にまとめます。
つまり、従来の制度はそのまま残り、大規模プラットフォームに「迅速化」と「透明化」の義務が加わったのが情プラ法です。
誰が対象?
特定電気通信役務提供者
SNS、掲示板、動画共有サイト、ブログサービスなど、不特定の者が閲覧できる情報を媒介する事業者が広く「特定電気通信役務提供者」に該当します。旧法から続く損害賠償責任の制限や発信者情報開示の枠組みは、これらの事業者全体に関係します。
大規模プラットフォーム
このうち、一定規模以上の事業者を総務大臣が「大規模特定電気通信役務提供者」として指定し、迅速化・透明化の追加義務を課します。
一般企業への影響
一般企業が直接の義務を負うわけではありません。ただし、SNSで情報発信する企業、コンテンツを発信する企業は、投稿する側としても、権利侵害を受ける側としても、制度の理解が必要です(詳しくは後述)。
大規模プラットフォームとは
一定規模以上が対象
指定要件は総務省令で定められており、平均月間発信者数の基準は「一千万」とされています(e-Gov法令検索「同法施行規則」)。
総務大臣が指定する
要件に該当する事業者を総務大臣が指定します。2025年4月30日の初回指定では、Google LLC(YouTube)、LINEヤフー、Meta Platforms(Facebook・Instagram・Threads)、TikTok、X Corp. の5者が指定されました(総務省報道資料(令和7年4月30日))。
対象事業者は更新される
その後も追加指定が行われています。2025年5月にはドワンゴ(ニコニコ)、Pinterest、サイバーエージェント(Amebaブログ)、湘南西武ホーム(爆サイ.com)の4者が(総務省報道資料(令和7年5月30日))、そして2026年8月31日の3回目の指定では、ガールズちゃんねる(ジェイスクエアード)、pixiv(ピクシブ)、note(note株式会社)、好き嫌い.com(個人運営)の4者が追加され、合計13者となりました(総務省報道資料(令和8年8月31日))。巨大SNSだけでなく、創作系プラットフォームや掲示板、個人運営のサービスまで対象が広がっています。対象は固定された一覧ではなく、総務省によって随時指定されるため、最新の情報を確認してください(総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」)。
主な義務
大規模プラットフォームに課される義務は、「迅速化」と「透明化」の2本柱です。通知までの「一定期間」は省令で7日間と定められています(総務省「情報流通プラットフォーム対処法の施行に係る省令・ガイドラインの策定」)。
- 削除申出窓口の整備: 被害者が権利侵害情報の削除を申し出やすい方法を整える(迅速化)
- 侵害情報調査専門員の配置: 申出を調査し判断する専門員を選任する(迅速化)
- 一定期間内の通知: 申出を受けてから原則7日以内に、措置を講じたかどうか等を申出者へ通知する(迅速化)
- 削除基準の策定・公表: どのような情報を削除するかの基準を定めて公開する(透明化)
- 運用状況の公表: 削除件数など、運用の状況を定期的に公表する(透明化)
削除申出の流れ

削除を申し出る
被害者(権利を侵害された人)が、プラットフォームの窓口から削除を申し出ます。
事業者が調査する
侵害情報調査専門員が、申出の内容と投稿を調査します。
削除するか判断する
権利侵害に該当するかを判断します。必要に応じて、投稿者の意見も確認されます。
結果が通知される
原則7日以内に、削除したか、削除しない場合はその理由が申出者へ通知されます。投稿者側にも、削除された場合はその旨が通知される仕組みです。
どんな情報が対象?
権利侵害情報の代表例は次のとおりです。
- 名誉毀損: 事実を示して人の社会的評価を下げる投稿
- プライバシー侵害: 私生活上の事実や個人情報を無断で公開する投稿
- 著作権侵害: 他人の著作物を無断で転載する投稿
- 商標権侵害: 他人の商標を無断で使用する投稿
投稿は必ず削除される?
削除義務とは限らない
ここが最も誤解されやすい点です。情プラ法は、申出があったすべての投稿を削除する義務を課す法律ではありません。申出=即削除ではなく、調査・判断のうえで削除の可否が決まります。

権利侵害を判断する
事業者は、申出内容が実際に権利侵害に該当するかを判断します。単に「不快」「批判された」だけでは権利侵害とは限りません。
表現の自由にも配慮する
すべての申出に対して即削除としてしまうと、正当な批判、意見、報道、公益性のある情報まで消される可能性があります。一方、削除しないだけでは被害が拡大します。情プラ法は、被害者救済と表現の自由のバランスを取りながら、「適切な判断を、迅速かつ透明に行う」仕組みを整えるものです。
発信者情報開示はどうなる?
発信者情報開示制度は残る
旧法から続く「発信者情報開示請求」の制度は、情プラ法でも維持されています。
削除とは別の制度
削除申出は「投稿を消してもらう」ための手段、発信者情報開示は「誰が投稿したかを特定する」ための手段です。
目的によって使い分ける
投稿を消したい→削除申出、投稿者を特定したい→発信者情報開示、損害賠償等を検討→発信者特定後に対応。情プラ法には複数の被害救済手段があると理解してください。個別の対応は、弁護士等の専門家へ相談することをおすすめします。
利用者・企業への影響
立場ごとの影響を整理します。以下の表にまとめます。
企業が確認すべきこと
- 自社が対象か確認する: 自社サービスが特定電気通信役務に該当するか、大規模指定の要件に近いか
- 削除申出窓口を確認する: 自社が利用する主要プラットフォームの申出窓口と手順を把握しておく
- 社内ルールを整える: SNS運用ガイドライン、誹謗中傷を受けた際の対応フロー、投稿前の権利確認
- 権利侵害を防ぐ: 自社の発信が他者の名誉・プライバシー・著作権・商標権を侵害しないよう制作体制を整える
- 最新情報を確認する: 対象事業者の追加指定やガイドライン改定は継続しているため、総務省の公表を定期確認する
【プロの視点】判断プロセスを透明にする法律
情プラ法の報道では、「大手SNSに義務が増えた」「削除対応が早くなる」という説明が多くなりがちです。しかし本質は、削除を義務付けたことではなく、「削除するかどうかの判断プロセス」を迅速・透明にしたことにあります。
従来は、被害者が申し出ても、いつ判断されるか、なぜ削除されないか、どんな基準かが分かりませんでした。情プラ法では、明確な窓口→調査→原則7日以内に通知→削除する、または削除しない+理由を通知→基準と運用状況を公開、という流れが求められます。「必ず削除する」ではなく「対応を迅速・透明にする」。この違いを理解しておくと、法律への過度な期待も過度な警戒も避けられます。
【waltsu視点】発信体制を見直す機会に
情プラ法は直接にはプラットフォーム事業者を対象とする法律ですが、SNSやWebで情報発信する企業にとっても意味があります。

一つは、自社への誹謗中傷や権利侵害への対応手段が明確になったこと。もう一つは、自社の発信側の体制です。生成AIでコンテンツを大量に作れる時代には、他者の著作物や商標、実在人物の名誉・プライバシーを意図せず侵害するリスクも高まります。削除基準が公開されるということは、企業側にも「削除される側にならない」ためのコンテンツ品質管理が求められるということです。
情プラ法を、規制として受け止めるだけでなく、自社のSNS運用ガイドライン、コンテンツの権利確認フロー、炎上・誹謗中傷時の対応手順を見直す機会として活用してください。AI時代のコンテンツ制作における著作権や情報発信のガバナンスは、それぞれ別記事で解説しています。
よくある質問
情プラ法とは簡単にいうと?
SNSなどの大規模プラットフォームに対し、誹謗中傷などの権利侵害情報への削除対応の迅速化と、運用状況の透明化を義務付ける法律です。旧プロバイダ責任制限法を改正・改称したものです。
いつから施行された?
2025年4月1日に施行されました。
すべてのSNSが対象?
迅速化・透明化の追加義務は、総務大臣が指定した大規模特定電気通信役務提供者が対象です。2026年8月時点で13者が指定されています。損害賠償責任の制限や発信者情報開示など旧法からの制度は、より広い事業者に関係します。
誹謗中傷は必ず削除される?
必ず削除されるわけではありません。申出を受けた事業者が権利侵害に該当するかを調査・判断し、削除しない場合はその理由が通知されます。表現の自由との両立が考慮されます。
旧プロバイダ責任制限法との違いは?
旧法の制度(損害賠償責任の制限・発信者情報開示)は維持されたうえで、大規模プラットフォームに削除対応の迅速化と運用の透明化の義務が新たに加わりました。
まとめ
この記事の要点
・情プラ法=旧プロバイダ責任制限法を改正・改称し2025年4月1日施行。大規模プラットフォームに「迅速化」「透明化」の義務を追加
・対象は総務大臣が指定する大規模事業者。2026年8月31日の追加指定で13者に拡大、今後も更新される
・「必ず削除する法律」ではない。原則7日以内の通知・削除基準の公表など「判断プロセス」を透明にする
・企業は、被害時の申出手段の把握と、自社の発信が権利侵害しないコンテンツ体制の両面で見直す
情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)は、インターネット上の権利侵害情報への対応を、迅速かつ透明にするための法律です。旧プロバイダ責任制限法の制度を維持しながら、大規模プラットフォームに対して、削除申出窓口の整備、専門員の配置、原則7日以内の通知、削除基準の公表、運用状況の公表を求めています。対象事業者は総務省によって随時指定され、2026年8月には創作系プラットフォームや掲示板まで広がりました。
重要なのは、情プラ法が「投稿を強制的に削除する法律」ではなく、「削除判断のプロセスを迅速・透明にする法律」だということです。被害者救済と表現の自由のバランスを取りながら、適切な判断を速く、分かりやすく行う仕組みを整えています。
企業にとっては、自社が権利侵害を受けた際の対応手段が明確になると同時に、自社の情報発信が他者の権利を侵害しないためのコンテンツ品質管理の重要性も高まります。「Web・SNSでの情報発信やコンテンツ運用体制を、権利面も含めて整理したい」という場合は、waltsuがコンテンツ制作の体制づくりからご支援します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法律相談ではありません。個別の判断が必要な場合は、弁護士などの専門家へご相談ください。
