・会社から生成AIパスポートの受験を勧められた
・受ける価値があるのか、G検定とどちらにするか迷っている
・社員に受けさせるかどうかを判断したい
生成AIを業務で使う人が増え、使えるかどうかより、使ってよい範囲を知っているかが問われるようになりました。社内研修の案内などで「生成AIパスポート」という資格名を見かける機会も増えています。ただ、何を証明する資格なのか、取る価値があるのかは分かりにくいままです。
生成AIパスポートとは、一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)が運営する、生成AIの基礎知識とリスク予防を問う民間資格です。合格が示すのは知識までで、価値は社内で注意の言葉が通じる状態を作れることにあります。本記事では2026年10月時点の試験概要と合格率、2027年2月からの試験範囲の改訂、他の資格との違い、会社での使い方までを整理します。
この記事のゴール(読了目安 約10分)
生成AIパスポートの中身と最新の試験情報を公式の数字で把握し、今受けるか次回まで待つか、会社として合格を何の証明として扱うかを決められるようになる。
生成AIパスポートとは
主催はGUGAの民間資格
生成AIパスポートは、GUGAが2023年10月に初回試験を開いた資格です。国が認定する国家資格ではなく、業界団体が運営する民間資格にあたります。GUGAは自らこの資格を「生成AIリスクを予防する資格試験」と説明しています。
何を証明する資格か
対象はAI初心者で、生成AIの仕組みや活用方法に加え、情報漏えいや権利侵害といった注意点を体系的に学んだことを示します。合格者には合格証書と、学習歴をネット上で示せるオープンバッジが発行され、資格は無期限で使えます。開発や実装の力を測る試験ではなく、安全に使うための基礎知識を持っているかを測る試験です。

試験の概要
試験は自宅などからインターネット経由で受けるIBT方式です。2026年10月時点の公式の試験概要をまとめると次のとおりです。
1問あたり約1分なので、迷った問題に時間をかけすぎない配分が要ります。合格の基準点は公式に開示されていません。「7割で合格」といった説明を見かけますが、公式の数字ではない点に注意してください。
途中で一時停止する機能はなく、時間を過ぎると自動で終了します。開始前に通信環境と周りの状態を整えておくことも、試験対策の一部です。
日程と申込方法
年5回、期間中いつでも受験
試験は2月・4月・6月・8月・10月の年5回です。2025年までは年3回でしたが、受験者の増加を受けて2026年から回数が増えました。各回は1か月の受験期間があり、その間の好きな時間に受けられます。ただし受験期間中の問い合わせ対応は平日10時から18時までなので、週末に受けると不具合が起きてもすぐには相談できません。申込期間は受験月の前の2か月間で、たとえば2026年10月試験は9月30日で締め切られています。
個人申込と団体受験
個人はGUGAの受験申込フォームから申し込みます。会社で受けさせる場合は団体受験が使え、非会員なら2名以上で申し込みができ、10名以上で受験料が10%割引になります。法人会員なら人数を問わず20%割引です。申込後のキャンセルと返金は原則できないため、受験者の確定を先に済ませておきます。
合格率と受験者数
GUGAは試験のたびに結果を公表しています。直近の数字は次のとおりです。
- 2026年4月試験: 受験者9,436名、合格率79.35%
- 2026年8月試験: 受験者32,877名、合格率81.21%
- 累計: 受験者148,487名、有資格者118,022名(2026年8月時点)
8月試験の受験者数は1回あたりで過去最多で、2026年は10月試験を残して年間9万名を超えました。2025年6月試験の受験者は10,759名で当時の過去最多だったので、1年あまりで1回あたりの受験者が約3倍になった計算です。合格率は約8割で推移しており、落とすための試験ではなく、基礎の抜けを確かめる試験だと読めます。
2027年2月から試験範囲が変わる
5章の構成が入れ替わる
GUGAは2026年10月1日、2027年2月試験から出題範囲(シラバス)を大きく改訂すると発表しました。2026年10月試験までは旧範囲、2027年2月試験からは新範囲です。章の名前は次のように変わります。
- 第1章: 「AI(人工知能)」から「AIの基礎と歴史」へ
- 第3章: 「現在の生成AIの動向」から「AIエージェント」へ
- 第4章: 「情報リテラシー・基本理念とAI社会原則」から「生成AIのリスク予防・AI倫理・ガバナンス」へ
- 第5章: 「テキスト生成AIのプロンプト制作と実例」から「生成AIの実践と活用事例」へ
リスク予防の章が最も厚くなる
改訂の中心は第4章です。シャドーAI、AI出力の評価と検証、個人情報や知的財産、AI法と国際ルールまでが並び、「AIは補助者であり、最終責任は人間にある」「AIを使わない判断」といった項目も入りました。知識の暗記から、出力を疑って判断する姿勢へと比重が移った改訂です。公式テキストも新範囲版に切り替わり、11月24日から順次発送の予定です。

資格更新テストとは
範囲の改訂にあわせて、有資格者向けの「資格更新テスト」が2027年2月に始まります。概要は次のとおりです。
- 形式: 動画視聴3時間程度と、チェックテスト10問(制限時間15分)
- 費用: 6,600円、学生は3,300円(いずれも税込)
- 申込期間: 2026年10月1日から2027年5月31日まで
受講できる期間は、受講IDの発行日から30日間です。受けなくても資格は無期限のままです。合格すると新しいオープンバッジが発行されるので、示せるのは改訂後の内容まで学び直したことになります。GUGAが「生成AI人材」を「学び続けている人材」と定義しているのも、この仕組みと対になっています。
試験中に生成AIは使えない
生成AIの資格ですが、試験中に生成AIを使うことは禁止されています。公式が挙げる主な禁止事項は次のとおりです。
- 外部への送信: 問題をAIツールや検索サービスに送って答えを得る
- 画像の解析: 画像検索や文字認識で問題を読み取る
- 別端末の利用: スマートフォンやスマートウォッチで検索や通信をする
カフェなどの公共スペースでは受けられず、机の上に筆記具も置けません。不正と判断されれば失格になります。問われているのは、AIに聞かずに判断できる知識です。
G検定・ITパスポートとの違い
よく比べられる2つの資格と、公式の情報で並べます。受験料はいずれも税込です。
G検定はAIの仕組みを企画に活かしたい人、ITパスポートはIT全般の土台を固めたい人に向きます。生成AIを安全に使う最低限から始めるなら生成AIパスポートという使い分けです。
取得して得られること
得られるものは、主に次の3つです。
- 体系的な一周: 断片的に覚えてきた用語を、範囲に沿って整理し直せる
- リスクの語彙: 情報漏えいや権利侵害を、具体的な言葉で説明できるようになる
- 学習歴の証明: オープンバッジで、学んだことを社外にも示せる
一方で、合格だけで転職や昇進が決まるほどの評価を得られるとは限りません。学んだ内容を業務でどう使っているかを一緒に語れるかで、資格の見え方は変わります。
受けるべき人の目安
向いているのは、業務で生成AIを使い始めた人、社内で使い方を相談されることが増えた人、仕組みより先に安全な使い方を押さえたい人です。職種を問わず、AIの出力を社外に出す立場にいる人ほど得るものが多い資格です。
反対に、AIの開発や実装を担う人には範囲が浅く感じられます。その場合はG検定やより専門的な学習へ進むほうが、時間の使い方として合っています。
迷う場合は、公式サイトのサンプル問題を先に解いてみると判断しやすくなります。知らない用語が多ければ受ける意味があり、ほとんど分かるなら改訂で増えた部分だけを学ぶ方法もあります。
勉強の進め方
教材はGUGAが公開・監修しているものを軸にすると、範囲から外れません。
- シラバス: 何が出るかを先に把握する
- 公式テキスト: 出題範囲をすべて扱う監修本
- サンプル問題: 公式サイトで公開されている
- AIクイズ: 公式LINEの〇✕形式。範囲の網羅は保証されていない
2027年2月以降に受けるなら、新範囲に対応した教材を選ぶことが最初の分かれ目です。旧範囲のテキストで学ぶと、厚くなったリスク予防の章を取りこぼします。進め方は、シラバスで範囲を見てからテキストを1周し、サンプル問題で出題の形に慣れる順番が無理がありません。
会社で受けさせるときの注意
団体受験は2025年時点で各回120社を超える申込があり、全社員での取得を目指す例もあると公表されています。会社として受けさせるなら、まず受験の時期と範囲の切り替えを合わせます。今から申し込めるのは2027年2月試験で、受験は新範囲です。受験料を会社が負担するか、業務時間内の受験を認めるかも事前に決めておくと、申込後の行き違いを防げます。
もう一つは、合格者に何を期待するかを先に決めることです。受けさせて終わりにすると、合格証が人事の記録に残るだけになります。合格を何の証明として扱うかは、次の視点で考えます。
【プロの視点】資格は社内の共通語になる
生成AIパスポートの解説の多くは、資格を「AI人材の証明」や「転職で有利になる武器」として語ります。個人の肩書きとして見れば、約8割が受かる入門資格の価値は限られて見えるでしょう。ですが、会社として見るなら評価の軸を変えるべきです。
見るべきは個人の合否ではなく、社内で注意の言葉が説明なしに通じるかです。「それは入力してはいけない情報です」「出力の数字は確かめましたか」と言ったとき、相手が同じ前提で受け取れるか。前提がそろっていないと、注意するたびに背景の説明から始まり、確認の会話が長くなります。長くなった確認は、やがて省かれます。
新しい範囲の第4章は、シャドーAI、用途に応じた検証の深さ、AIを使わない判断までを扱っています。これは個人の知識を増やすというより、組織の中で同じ基準を持つための項目だと読めます。1人が詳しくても、周りが同じ言葉を持っていなければ、その知識は現場で使われません。
ですから、受けさせる人数を決めるときも、部署の中で言葉がそろう単位で考えるのが筋です。出力を社外に出す人と、その確認をする人が同じ範囲を学んでいれば、確認は短い一言で済みます。

【waltsu視点】知っていても表は崩れる
ただ、言葉がそろっても防げないことがあります。サイトの担当者に、価格表の更新をAIに書き換えさせる手順を実演したことがありました。ソースと指示文をAIに渡し、出力をそのまま入れる流れでしたが、実演の場で出力された表が崩れました。チャット欄に直接貼り付けたことが原因の可能性があり、渡し方を変えて検証し直すことになりました。
知識があれば「AIの出力は崩れうる」とは分かります。しかし、崩れたときに気づいて戻す手順は、業務の側で作るしかありません。どこを見れば崩れに気づけるのか、崩れたら何に戻すのかは、試験の範囲には書かれていないからです。
waltsuが重視しているのは、AIで時間を短くすることより、試す回数を増やすことです。戻し方が決まっていれば、失敗しても元に戻せるので、担当者は新しい使い方を試すことをためらわなくなります。共通の言葉と戻し方がそろったとき、資格は試行回数を増やす手段に変わります。
明日できる一歩として、合格した人に、自部署の業務を1つ選んで「AIに渡す前に確かめること」と「受け取った後に確かめること」を3行ずつ書いてもらってください。

よくある質問
生成AIパスポートは国家資格?
国家資格ではありません。一般社団法人生成AI活用普及協会が運営する民間資格です。
合格点は何点ですか?
公式は合格の基準点や採点の詳細を開示していません。「何割で合格」という説明は公式の数字ではありません。
資格に有効期限はありますか?
ありません。一度取得すれば無期限です。2027年2月から始まる資格更新テストは任意で、受けなくても資格は失われません。
今から受けるなら旧範囲と新範囲どちら?
2026年10月試験の申込は終わっているため、今から申し込む場合は2027年2月試験、つまり新範囲での受験になります。教材も新範囲版を選んでください。
スマートフォンで受験できますか?
受験できます。ただし試験に必要な場合を除き、別の端末での検索やAIの利用は禁止されています。公共スペースでの受験もできません。
この記事の要点
・生成AIパスポートはGUGAの民間資格で、生成AIの基礎とリスク予防を問う
・IBT方式・60分60問・受験料11,000円、2026年8月試験の合格率は81.21%
・2027年2月試験から範囲が変わり、リスク予防の章が最も厚くなる
・合格の価値は、社内で注意の言葉が通じる状態を作れること
まとめ
生成AIパスポートは、生成AIを安全に使うための基礎を問う、約8割が合格する入門資格です。2027年2月からは範囲が改訂され、出力を疑って判断する姿勢がより強く問われるようになります。
会社として受けさせるなら、合格者の数を目標にするより、部署の中で注意の言葉がそろうことを目標にしてください。そのうえで、出力の崩れに気づいて戻す手順を業務に組み込めば、資格は使い方を広げる助けになります。
まずは受験時期と範囲の切り替えを確認し、誰と誰が同じ言葉をそろえるべきかを決めるところから始めてみてください。社内の生成AI活用ルールづくりや、業務への組み込み方に迷う場面が出てきたら、waltsuが現場の運用設計までご支援します。
