マーケティング基礎

予測分析とは?マーケティングでの活用例・手法・進め方をわかりやすく解説

予測分析とは。施策を打つ時期を起きた後から起きる前へ動かす
マワルくん マワルくん
こんな人におすすめ
・「予測分析」という言葉は聞くが、自社のマーケティングで何ができるのか分からない
・離反やLTVの予測を始めたいが、データも人も足りないと感じている
・分析レポートは出ているのに、施策が変わらないことに違和感がある

月末のレポートで「先月は来店が減った」と分かっても、その月の売上は戻りません。多くのマーケティング現場の分析は、起きたことを説明する事後評価で止まっています。次に何が起きるかを先に知り、起きる前に手を打つための方法が予測分析です。

予測分析とは、過去と現在のデータからパターンを見つけ、将来の結果や行動を確率として推定する分析手法です。予測分析の価値は当たることではなく、施策を打つ時期を「起きた後」から「起きる前」に動かすことにあります。本記事では、定義、活用例、手法、必要なデータ、進め方、精度の見方、注意点、中小企業の始め方まで整理します。

この記事のゴール(読了目安 約10分)

予測分析で何を予測し、どのデータを使い、結果をどの施策につなぐかを、自社の規模に合わせて設計できるようになる。

予測分析とは

予測分析の定義

予測分析とは、過去のデータに統計モデルや機械学習を当てはめ、「次に何が起こるか」を推定する分析です。Google Cloudは、データを使って将来の結果を予測する工程と定義しています。

対象は売上のような数値だけではありません。「この顧客は3か月以内に解約するか」「このリードは商談になるか」といった、個々の顧客や案件の確率を出せる点が、マーケティングで使われる理由です。

分析の4段階での位置づけ

データ分析は、答える問いの違いで4段階に分けて整理されます。予測分析は「次に何が起こるか」、処方的分析は「今何をすべきか」に答えるものとされています。

段階 答える問い マーケティングでの例
記述的分析 何が起きたか 先月の売上・CV数の集計
診断的分析 なぜ起きたか 流入元別・セグメント別の要因分解
予測分析 次に何が起こるか 離反確率・購入確率のスコア
処方的分析 今何をすべきか 誰にどの施策を打つかの推奨

多くの現場は、記述と診断で止まったままです。予測分析は、集計と要因分解の先にある「先回り」の段階です。

記述・診断・予測・処方の4段階と、それぞれが答える問い

マーケティングで予測分析が必要な理由

理由は3つあります。

第1に、施策の打ち手が遅れるからです。月次レポートで離反が増えたと分かった時点で、その顧客はもう戻りません。予測があれば、離れる前に連絡できます。

第2に、全員に同じ施策を打つ余裕が無くなったからです。広告費も人手も限られる中で、反応する確率が高い相手から順に打つには、確率を出す仕組みが要ります。

第3に、予測に必要な道具が安くなったからです。かつては専門部署の仕事でしたが、今はアクセス解析ツールや顧客管理ツールに予測機能が組み込まれ、表計算でも簡単な予測モデルを組めます。

マーケティングでの活用例

予測分析でマーケティングが扱う対象は、主に次の6つです。

  • 離反予測: 解約や休眠に向かう顧客を、行動の変化から事前に検知する
  • LTV予測: 顧客が今後もたらす売上を推定し、獲得にかけられる費用の上限を決める
  • 購入確率・リードスコア: 見込み客ごとに商談化や購入の確率を付け、営業の優先順位を決める
  • 需要予測: 商品や店舗ごとの売れ行きを見込み、在庫や人員を先に調整する
  • 最適なタイミング: 次の購入時期を推定し、配信の日付を決める
  • 次に買う商品: 購買履歴から関連する商品を推定し、提案に使う

需要予測は在庫と結びつくため、他と切り分けて設計します。詳しくはAI需要予測の仕組みと導入方法で解説しています。

予測分析の仕組み

予測分析の工程は、次の5つです。

  • 問いを決める: 「3か月以内に解約する顧客を知りたい」のように、予測する対象と期間を言葉にする
  • データを集めて整える: 購買履歴、行動ログ、属性を顧客単位でつなぎ、欠けや誤りを直す
  • モデルを作る: 過去のデータで「解約した顧客」と「しなかった顧客」の違いを学習させる
  • 検証する: 学習に使っていない期間のデータで、予測がどれだけ当たるかを確かめる
  • 施策につなぐ: スコアを配信リストや営業の優先順位に反映し、結果を次の学習に戻す

モデルを作る工程は、全体の一部に過ぎません。問いの決め方とデータの整え方で、予測の質はほぼ決まります。

予測分析の主な手法

手法を選ぶ基準は、予測したいものの形です。代表的な手法として回帰、決定木、ランダムフォレスト、クラスタリング、時系列モデルが挙げられます。

手法 予測するもの マーケティングでの用途
回帰 数値 LTV、売上額、来店数
分類 はい・いいえ 解約するか、購入するか
時系列 時間に沿った推移 需要予測、季節変動
クラスタリング 似た集団 顧客セグメントの発見
決定木・ランダムフォレスト 条件の組み合わせ どの条件が離反に効くかの把握

手法の名前を覚える必要はありません。数値を当てたいのか、はい・いいえを当てたいのかを決めれば、手法はほぼ絞られます。

予測に使うデータ

自社データ

中心になるのは、顧客の購買履歴、サイトやアプリの行動ログ、問い合わせ履歴、属性といった自社で集めたファーストパーティデータです。予測の対象と結果の両方を、顧客単位でつなげられることが条件になります。

外部データ

店舗型のビジネスでは、売上が自社の施策だけでは説明できないことがよくあります。waltsuが店舗型ビジネスの売上要因を分析した案件では、気温や天候に加えて、近隣の学校の遠足や休校日と来訪者数の関係を捉え、遠足の前に持ち物のチェックリストを配信するといった、需要が発生する前の施策を検討しました。

Web上のデータだけを見ていると、売上を動かしている本当の要因を見落とします。外部データを来店データと組み合わせて初めて、事後の評価から事前の予測へ移れます。

自社の来店データと天候・学校行事などの外部データを組み合わせて来店を予測し、需要が発生する前に施策を打つ流れ

何を予測するかを決める

予測分析で最初につまずくのが、目的変数の定義です。目的変数とは「当てたいもの」を数えられる形にしたもので、ここが曖昧だと、精度の高いモデルを作っても役に立ちません。

waltsuが問い合わせフォームの運用を確認した企業では、月40〜50件のフォーム送信のうち、純粋な問い合わせは20〜30件程度で、残りには営業メールなどが含まれていました。この状態で「問い合わせ」を目的変数にすると、モデルは営業メールが来る確率まで学習してしまいます。

予測を始める前に、有効な問い合わせ・有効な商談を定義し、記録を分ける。フォームの種別を分ける、迷惑送信を除くといった地味な整備が、予測の前提になります。

予測分析の進め方

中小企業が予測分析を始めるときの手順は、次の6つです。

  • 施策から逆算して問いを決める: 「離反しそうな顧客に電話する」のように、予測結果を受け取った後の行動を先に決める
  • 目的変数を定義する: 離反とは何日間の未購入か、有効な商談とは何かを数えられる形にする
  • データを顧客単位でつなぐ: 購買・行動・属性を同じ顧客IDでそろえる
  • 小さく作る: 最初は表計算で、直近の購入からの日数や購入回数など数個の変数で試す
  • 検証してから配る: 過去の期間で当たり具合を確かめてから、施策に使う
  • 結果を戻す: 施策の反応を記録し、次のモデルの学習データにする

最初の一歩は、モデルではなく問いの言語化です。「何が分かれば、明日の行動が変わるか」を1行で書けたら、予測分析は半分終わっています。

精度の見方

予測の精度は「何%当たったか」だけで見ないでください。離反する顧客が全体の5%なら、全員を「離反しない」と予測しても95%当たります。

見るべきは、予測スコアの高い順に施策を打ったとき、無作為に打つより何倍の成果が出るかです。

もう1つは再現性です。先月のデータで作ったモデルが今月も同じように当たるかを、毎月確かめます。

予測分析の注意点

相関と因果を混同しない

「アプリを入れた顧客は離反しにくい」という予測が出ても、アプリを入れさせれば離反が減るとは限りません。もともと熱心な顧客がアプリを入れているだけかもしれない。予測は「誰が」を教えますが、「何をすれば」は施策の検証で確かめ、「なぜ」は顧客インサイトを探る別の作業になります。

答えを含んだデータで学習しない

「解約手続きのページを見た」を離反予測の変数に入れると、精度は高く出ますが、その時点ではもう遅い。予測に使うのは、施策を打てる時点で手に入る情報に限ります。

予測は劣化する

顧客の行動や市場が変われば、過去のパターンは通用しません。作って終わりにせず、定期的に作り直す前提で運用します。

個人情報の扱い

個人単位の行動を推定する分析で問われるのは、利用目的の範囲や本人への説明です。データを集める段階で、何に使うかを明示しておきます。

主なツールと位置づけ

予測分析のツールは、専門的なものから身近なものまで幅があります。

  • アクセス解析ツールの予測機能: GA4の予測指標は、購入の可能性、離脱の可能性、予測収益を自動で算出する。ただし過去28日間に、予測の条件を満たしたリピーターと満たさなかったリピーターがそれぞれ1,000人以上必要など、一定の規模が前提
  • 顧客管理・MAツールの組み込み機能: SalesforceやHubSpotなどに、リードスコアや離反予測が組み込まれている
  • データ基盤の機械学習機能: BigQuery MLのように、蓄えたデータに直接モデルを当てられる
  • 表計算・生成AI: 小規模なら表計算の回帰分析で十分。生成AIにデータ分析を手伝わせると、モデルの作成や検証の手間が下がる

ツールの機能は変化が速いため、導入時に最新の仕様を確認してください。ツールを選ぶのは、問いとデータが整ってからです。

中小企業の始め方

データも人も足りない会社ほど、予測分析は小さく始めるべきです。

まず、顧客ごとに「最後に買った日」「買った回数」「買った金額」の3つを表にします。これだけで見えるのが、しばらく買っていない顧客、つまり離反しかけている顧客です。

次に、その顧客に連絡し、反応した人としなかった人を記録します。この記録が、次のモデルの学習データです。

店舗ビジネスなら、天候や近隣の行事と来店数を並べて記録するところから始められます。予測分析の入口は、高度なモデルではなく、結果と要因を並べて記録する習慣です。

【プロの視点】当たる予測より行動が変わる予測

予測分析の議論は、たいてい精度の話に向かいます。どのモデルが当たるか、どの変数を足せば精度が上がるか。業務で価値を決めるのは、そこではありません。

見るべきは、予測結果を受け取った人の行動が、予測が無いときと比べて変わるかです。

離反確率が出ても、営業が全員に同じ電話をかけるなら、予測は要りません。逆に、精度がそれほど高くなくても、「上位2割にだけ連絡する」と決めた時点で、人の動きと費用の配分が変わります。予測の価値は、当たる割合ではなく、行動の変化量で測るものです。

だから設計は逆順にします。予測を出してから使い道を考えるのではなく、先に「この数字が出たら誰が何をするか」を決め、そのために必要な予測だけを作る。使い道の決まっていない予測は、レポートに1行増えるだけで終わります。

もう1つ、予測の対象を広げすぎないことです。売上全体を予測しようとすると、要因が多すぎて当たりません。「雨の日の来店数」「休校日の午前の客数」のように、要因が絞れる単位に分けて予測するほうが、当たりやすく、しかも施策に直結します。予測は、大きく当てるより、小さく当てて動かすものです。

精度は高いが全員に同じ施策を打つ状態と、精度はほどほどでも上位に絞って施策を打つ状態の比較

【waltsu視点】予測は学習の周期を短くする

waltsuが予測分析を勧める理由は、未来を言い当てるためではありません。施策を試して結果から学ぶ周期を、短くするためです。

事後評価しかない組織では、施策を打ってから結果が出て、次を考えるまでに1か月かかります。年に12回しか学べません。予測があれば、来週の来店が落ちそうだと分かった時点で先に手を打ち、翌週には結果が返ってきます。学ぶ回数が増えるほど、予測も施策も速く良くなります。

店舗型ビジネスの案件で学校行事と来訪者数の関係に注目したのも、この考え方からです。売上の増減を月末に説明するのではなく、行事の予定表を見て先に動く。外れてもよい。外れた理由が次の変数になります。

つまり予測分析は、当てるための投資ではなく、試行回数を買う投資です。先に動ける会社は、後から説明する会社より、同じ期間で多くを学びます。

明日やることは1つです。この1年で売上や問い合わせが大きく動いた日を書き出し、その日に自社の施策以外で何があったかを、仮説でよいので3つ書いてください。その表が、予測分析の最初の学習データになります。

事後評価だけの組織は月に1回しか学べず、予測がある組織は週ごとに施策と結果を回せることの対比

よくある質問

予測分析とは何ですか?

過去のデータからパターンを見つけ、将来の結果や顧客の行動を確率として推定する分析です。「次に何が起こるか」に答え、施策を起きる前に打つために使います。

需要予測との違いは何ですか?

需要予測は、商品や店舗の売れ行きを見込む予測分析の一種です。予測分析では、それに加えて離反、LTV、購入確率など、顧客単位の予測も対象です。

データが少なくてもできますか?

できます。最後に買った日、回数、金額の3つがあれば、離反しかけている顧客は見えます。ツールの自動予測には一定の規模が要りますが、表計算での予測に規模の条件はありません。

どの手法を選べばよいですか?

数値を当てたいなら回帰、はい・いいえを当てたいなら分類、時間の推移なら時系列です。予測したいものの形を決めれば、手法はほぼ絞られます。

精度はどのくらい必要ですか?

決まった基準はありません。予測スコアの高い順に施策を打ったとき、無作為に打つより成果が明確に上回れば、業務で使えます。

この記事の要点

・予測分析は「次に何が起こるか」に答え、施策を起きる前に打つための分析
・価値は当たる割合ではなく、予測を受けて行動が変わるかで決まる
・Web上のデータだけでは売上を説明できない。外部データを来店データと組み合わせる
・最初の一歩は、問いの言語化と、結果と要因を並べて記録する習慣

まとめ

予測分析とは、過去のデータからパターンを見つけ、将来の結果や顧客の行動を確率として推定する分析です。マーケティングでは離反、LTV、購入確率、需要、配信のタイミングなどに使われ、施策を打つ時期を「起きた後」から「起きる前」へ動かします。

始めるのに高度なモデルは要りません。何が分かれば明日の行動が変わるかを1行で書き、目的変数を定義し、顧客単位でデータをつなぎ、小さく作って検証する。この順序を守れば、表計算からでも始められます。

まずは、売上や問い合わせが大きく動いた日と、その日に何があったかを書き出すところから始めてみてください。そのうえで、何を予測し、どの施策につなぐかの設計に迷う場面が出てきたら、waltsuがデータの整備から予測を施策に組み込むところまでご支援します。

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この記事を書いた人

藤井 俊輔

代表取締役

藤井 俊輔/ フジイ シュンスケ

ベンチャー企業の外部CMOや水族館のマーケティング担当などに従事。オンライン/オフライン問わず集客を中心としたマーケティング施策に強み。

システム・アプリ開発Web広告運用Web集客全般
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