・マーケティング2.0を知りたい
・1.0との違いが曖昧
・STPとの関係を整理したい
マーケティングを学んでいると、「マーケティング1.0」「マーケティング2.0」「マーケティング3.0」といった言葉を目にすることがあります。マーケティング2.0とは、「顧客中心・消費者志向のマーケティング」を表す考え方です。
マーケティング1.0では、良い製品を作る→大量生産する→多くの人へ販売する、という「製品中心」の考え方が強い時代でした。しかし、市場に商品が増え、顧客が複数の商品から選べるようになると、「良い商品を作れば売れる」だけでは競争に勝てなくなります。そこで重要になったのが、市場を分ける→狙う顧客を決める→競合との違いを明確にする→その顧客に合った商品を提供する、という考え方です。これを代表するフレームワークが、Segmentation・Targeting・Positioningからなる「STP」です。
本記事では、マーケティング2.0の意味、誕生した背景、特徴、STPとの関係、マーケティング1.0・3.0との違い、そして現代でも顧客中心が重要な理由まで解説します。
この記事のゴール(読了目安 約13分)
マーケティング2.0を一言で説明でき、STPと4Pの順番を整理し、「誰に何を届けるか」を自社の施策設計へ落とし込めるようになる。
マーケティング2.0とは
マーケティング2.0とは、「顧客中心のマーケティング」です。主に1970〜1980年代ごろに主流になったマーケティングを説明する概念として使われることが多いですが、1.0から5.0までを厳密な年代区分として考えるより、「マーケティングで重視する対象がどう変わってきたか」を整理する概念として理解するのが適切です。
マーケティング1.0の問いは「この商品をどう売るか?」でした。マーケティング2.0の問いは「誰に、どんな価値を提供すれば選ばれるか?」です。コトラーらも、Philip Kotler ほか『Marketing 3.0: From Products to Customers to the Human Spirit』第1章(Wiley公式抜粋)で、マーケティング2.0について、製品の価値は消費者によって定義され、企業は市場をセグメントし、特定のターゲット市場に向けた商品を提供する必要がある、という顧客志向の時代として整理しています。
なぜマーケティング2.0が生まれた?
背景には、市場の成熟があります。

商品が増えた
マーケティング1.0の時代は需要>供給になりやすく、一定品質の商品を安く大量に生産すれば売れやすい環境でした。しかし企業の生産力が高まり、市場に多くの商品が並ぶようになります。供給増加→商品選択肢の増加→競争激化。顧客は「商品があるから買う」のではなく、「複数の商品から選ぶ」ようになりました。
顧客ニーズが多様化した
同じ自動車でも、価格を重視する人、デザインを重視する人、燃費を重視する人、高級感を重視する人がいます。すべての顧客へ同じ商品を売るだけでは、対応しにくくなりました。
競合との差別化が必要になった
似た商品が増えると、商品を作るだけでは売れません。顧客から見て「なぜ他社ではなく、この商品を選ぶのか」を明確にする必要が生まれ、差別化・ポジショニングが重要になりました。
顧客側へ主導権が移った
商品が少ない市場では、企業が商品を供給し顧客が購入する、という流れでした。商品が豊富な市場では、複数企業の複数商品を顧客が比較し、顧客が選択します。売り手市場から買い手市場へ。この変化が「顧客中心」のマーケティングを必要としたのです。
マーケティング2.0の5つの特徴
顧客中心
最大の特徴です。企業が売りたい商品ではなく、「顧客が何を求めているか」からマーケティングを考えます。顧客は何に困っているか→何を求めているか→どんな商品なら選ぶか、の順で考えるのです。
市場を分ける
「すべての人」をターゲットにしません。年代などの人口統計だけでなく、価値観、課題、購買行動、利用目的などによって市場を分けます。
ターゲットを決める
市場を分けたあと、「自社が最も価値を提供できる顧客」を選びます。売れる人を全員狙うのではなく、誰を優先するかを決めるのです。
差別化する
競合と同じことをしても選ばれにくいため、品質、価格、デザイン、サービス、専門性、ブランドなどから「顧客にどう認識してほしいか」を決めます。
顧客満足を重視
1.0では商品を売ることが大きな目的でした。2.0では、顧客が満足する→再購入→継続→企業成果、という視点が強くなります。
マーケティング2.0とSTP
マーケティング2.0を理解するうえで特に重要なのが「STP」です。市場を細分化し、狙う市場を決め、その市場でどのような立ち位置を取るかを考えるフレームワークです。

Segmentation|市場を分ける
たとえば保険なら、20代単身、子育て世帯、経営者、高齢者など。重要なのは、市場は一つではないと考えることです。
Targeting|誰を狙うか決める
「すべての企業」ではなく「従業員50〜300名のBtoB企業」のように絞ります。ターゲットが決まることで、商品、価格、広告、営業、Webサイトを設計しやすくなります。
Positioning|どう認識されるか決める
選んだ顧客から「どんな会社・商品だと思ってもらうか」を決めます。「安い会社」ではなく「BtoBマーケティングを戦略から実行まで支援する会社」のように、競合と比較したときの違いを明確にします。STP分析の詳しい手順は、別記事で解説しています。
【関連記事】STP分析とは?3つの要素・やり方・具体例をわかりやすく解説
STPと4Pの関係
マーケティング1.0の代表フレームワークは4P、2.0ではSTPが重要になります。ただし、STPが4Pを置き換えたわけではありません。

基本的には、STP=誰に、どんな価値を提供するか→4P=その価値を、どの商品・価格・流通・販促で届けるか、という関係です。たとえば、STPで「30代の子育て世帯に、手続きが分かりやすい保険相談として認識される」と決めたら、Product=子育て世帯向け保険相談、Price=無料相談、Place=店舗+オンライン、Promotion=検索広告・SEO・SNS、と落とし込みます。
つまり、STP→4Pの順番で考えます。マーケティング2.0の重要な変化は、商品を作ってから売り方を考えるのではなく、誰に価値を届けるかを決めてから、商品・販売方法を設計するようになったことです。
マーケティング1.0との違い
両者の違いを整理します。以下の表にまとめます。
最も重要な違いは順番です。1.0は「商品→顧客」、2.0は「顧客→商品」。マーケティング1.0の詳細は、別記事で解説しています。
【関連記事】マーケティング1.0とは?製品中心の考え方・4P・2.0以降との違いを解説
マーケティング2.0の事例
自動車
1.0では一つの標準的な自動車を大量販売しました。2.0では、ファミリー(安全性・収納・広さ)、若者(デザイン・価格)、高所得者(高級感・ブランド)、アウトドア層などに市場を分け、顧客ごとに商品を変えます。
化粧品
「すべての女性」ではなく、年代、肌質、悩み、価格帯、ライフスタイルで市場を分けることで、乾燥肌向け、敏感肌向け、エイジングケア、若年層向けなどの商品が生まれます。
Web制作会社
1.0的な訴求は「ホームページを作ります」。2.0的には、中小企業・BtoB・採用・EC・医療などに市場を分け、たとえばBtoB企業をターゲットに選び、「BtoBマーケティングまで考えたWeb制作」というポジションを取ります。同じWeb制作でも、誰に提供するかによって価値が変わるのです。
マーケティング2.0のメリット
顧客中心のアプローチには4つのメリットがあります。
- 顧客ニーズに合った商品を作れる: 顧客を理解することで、誰にも刺さらない商品を減らせる
- 差別化しやすい: 市場全体では競合が多くても、特定の顧客層に絞れば強いポジションを作れる場合がある
- 経営資源を集中できる: すべての顧客を狙うと広告・商品・営業が分散する。ターゲットを決めることで限られた資源を集中できる
- メッセージが明確になる: 「すべての企業へ」より「○○に悩んでいるBtoB企業へ」のほうが具体的な訴求を作りやすい
マーケティング2.0の限界
一方で、2.0にも限界があります。
顧客を「消費者」として見る
コトラーらは、顧客中心アプローチについて、消費者をマーケティング活動の受動的な対象として捉える側面があると指摘しています。人は商品を買う人であるだけでなく、価値観、社会への意識、感情、信念を持っています。そこで3.0では、顧客を「一人の人間」として捉える考え方へ広がっていきます。
顕在ニーズだけでは新しい市場を作りにくい
顧客へ「何が欲しいですか?」と聞くだけでは、まだ存在しない商品へのニーズは把握できない場合があります。顧客ニーズに加えて、企業の技術、顧客行動、潜在課題まで見る必要があります。
セグメントしすぎる問題
市場を細かく分けすぎると、市場規模が小さくなりすぎる場合もあります。セグメンテーションは、細かければ細かいほど良いわけではありません。
マーケティング3.0との違い
2.0=顧客中心、3.0=価値中心・人間中心、という違いです。2.0の問いは「顧客は何を求めている?」で、顧客を消費者として見て、顧客満足を目指します。3.0の問いは「顧客はどんな価値観を持っている?」で、顧客を一人の人間として見て、機能だけでなく感情・社会的価値まで満たすことを目指します。
つまり、1.0=製品を見る→2.0=顧客のニーズを見る→3.0=顧客の価値観まで見る、という進化です。
マーケティング1.0〜5.0の違い
進化の全体像を整理します。以下の表にまとめます。
1.0→2.0→3.0と進む中で、古い考え方が消えたわけではありません。現在でも、製品+顧客+価値+顧客接点+テクノロジーをすべて考える必要があります。通史はマーケティングの歴史の記事で解説しています。
【関連記事】【年表でわかる】マーケティングの歴史と変遷!1.0から最新トレンドまでの流れを徹底解説
マーケティング2.0は現在でも重要?
結論として、非常に重要です。現在でもマーケティング戦略では、「誰に売るか」を決めないまま施策を実行すると失敗しやすくなります。
SEOをやる、広告をやる、SNSをやる、と決める前に、誰に?→どんな課題へ?→どんな価値を?→競合ではなく自社を選ぶ理由は?を決める。マーケティング2.0の考え方は、現在のマーケティング戦略の基盤です。
AI時代でも同じです。AIで記事を100本作ることはできます。しかし、誰に何を届けるかが決まっていなければ、100本作っても成果につながりにくいのです。
現代でマーケティング2.0を使う6ステップ
市場を把握する
市場規模、競合、顧客、トレンドを整理します。
顧客を分ける
企業規模、業種、課題、行動、価値観などで市場を分けます。
ターゲットを決める
自社が最も価値を提供できる顧客を決めます。
ポジションを決める
競合と比較して「何で選ばれるか」を決めます。
4Pへ落とす
商品、価格、販売方法、プロモーションをターゲットに合わせます。
顧客の反応を見る
施策→顧客反応→分析→STP修正を繰り返します。STPは一度決めて終わりではなく、市場・顧客が変われば見直すものです。
よくある失敗
マーケティング2.0の実践でつまずきやすいパターンを4つ挙げます。
- ターゲットを「30代男性」で終わらせる: 属性だけでは不十分。同じ30代男性でも課題・価値観・行動は異なる
- 市場規模だけでターゲットを決める: 大きな市場=自社が勝てる市場ではない。市場の魅力度×自社の強み×競合状況で判断する
- ポジショニングを自社目線で決める: 「高品質です」だけでは弱い。顧客から見て競合と何が違うかが重要
- STPと施策がつながっていない: ターゲットは中小企業経営者なのに広告は若者向けSNS中心、では一貫性がない。STP→4Pをつなげる
【プロの視点】本質は「捨てること」
マーケティング2.0というと、「顧客ニーズを理解しましょう」という説明になりやすいものです。しかし、実務でSTPを使うときに最も難しいのは、顧客を知ることだけではありません。「誰を狙わないかを決めること」です。
ターゲットが「すべての企業」では、商品、Webサイト、SEO、広告、営業のすべてが曖昧になります。一方、「従業員50〜300名で、マーケティング専任者が少ないBtoB企業」まで決めれば、必要なサービス、訴求、コンテンツ、営業方法が変わります。
つまりSTPは、顧客を分類するための分析ではありません。限られた人・予算・時間を、「どの市場へ集中させるかを決める経営判断」です。マーケティング2.0の本質は、顧客を大切にすることだけではなく、「誰に価値を届けるかを選択すること」にあります。
【waltsu視点】施策の前に「誰に何を」を決める
「SEOをやりたい」「広告をやりたい」「Webサイトをリニューアルしたい」という相談があったとします。しかし、最初に決めるべきなのはSEOか広告かではありません。まず、誰に、何を届けるのかを決めます。

たとえば「Web制作会社です」だけでは弱い。顧客=BtoB企業、課題=マーケティング担当者が少なく施策を実行できない、提供価値=戦略から制作・運用まで同じチームで支援、という形で整理する。ここが決まれば、Webサイトは誰に何を伝えるか、SEOはどんな検索意図を取るか、広告は誰へ配信するか、営業は何を提案するか、コンテンツは何を発信するかがつながります。
マーケティング2.0で確立されたSTPは、現在でもマーケティングの「基盤構築」にあたります。その上に、サイト、SEO、広告、PR、SNS、営業などの施策を乗せるのです。
AI時代も同じです。AIによって記事、広告、画像、分析を高速に作れます。しかし、誰に何を届けるかが間違っていれば、制作速度だけ上げても成果にはつながりません。AIによって施策実行が速くなるほど、「誰に何を」というマーケティング2.0の基本が、むしろ重要になるのです。
よくある質問
マーケティング2.0とは簡単にいうと?
顧客中心・消費者志向のマーケティングです。市場を細分化し、ターゲットを決め、その顧客に合わせた商品・価値を提供する考え方です。
マーケティング2.0はいつの時代?
一般的には1970〜1980年代ごろのマーケティングを説明する概念として使われることが多いです。ただし、厳密な年代区分というより、製品中心から顧客中心へ変化した段階を示す考え方として理解してください。
マーケティング2.0は誰が提唱した?
フィリップ・コトラーが、マーケティングの進化を1.0、2.0、3.0などの段階として体系的に整理したことで知られています。
マーケティング2.0の目的は?
顧客ニーズを理解し、ターゲットに適した価値を提供することで、顧客満足を高めて選ばれることです。
マーケティング2.0の代表的なフレームワークは?
STPです。Segmentation(市場を分ける)・Targeting(誰を狙うか決める)・Positioning(どう認識されるか決める)の3つから整理します。
マーケティング1.0と2.0の違いは?
1.0は製品中心で「この商品をどう売る?」、2.0は顧客中心で「誰にどんな商品・価値を提供する?」という違いです。
4PとSTPはどちらを先に行いますか?
基本的にはSTPを先に考えます。STPで誰にどんな価値を届けるかを決めたあと、4Pで商品・価格・流通・販促へ落とし込みます。
マーケティング2.0と3.0の違いは?
2.0は顧客のニーズを重視します。3.0は、ニーズだけでなく顧客の価値観や社会的な課題まで重視します。
マーケティング2.0は現在でも使えますか?
使えます。STPや顧客中心の考え方は、現在でもマーケティング戦略の基本です。ただし、現代では顧客の価値観、デジタル接点、AI・データなどもあわせて考える必要があります。
AI時代でもSTPは必要ですか?
必要です。AIでマーケティング施策を高速化できても、ターゲットや提供価値が間違っていれば成果にはつながりません。AI時代ほど「誰に何を届けるか」という戦略設計が重要になります。
まとめ
この記事の要点
・マーケティング2.0=顧客中心のマーケティング。市場の成熟が「作れば売れる」を終わらせた
・代表フレームワークはSTP。市場を分け、狙う顧客を決め、選ばれる理由を作る
・順番はSTP→4P。「誰に何を」を決めてから商品・価格・流通・販促を設計する
・本質は「捨てること」。AI時代ほど、戦略設計としてのSTPが重要になる
マーケティング2.0とは、「顧客中心のマーケティング」です。市場が成熟し、商品が増え、競合が増え、顧客の選択肢が増え、ニーズが多様化することで、「作れば売れる」だけでは成果が出にくくなりました。そこで重要になったのが、市場を分け(Segmentation)、狙う顧客を決め(Targeting)、競合との違いを決める(Positioning)というSTPです。そしてSTP→4Pの順番で、誰に何を届けるかを決めてから、商品・価格・流通・販促へ落とし込みます。
マーケティングは、1.0=製品→2.0=顧客→3.0=価値→4.0=デジタル時代の顧客関係→5.0=テクノロジーへと考える範囲が広がってきました。しかし、2.0は古い理論だから不要、ではありません。誰に→何を→なぜ自社から買うのかを決めることは、今もマーケティングの基盤です。
特にAIによって施策実行が高速化するほど、「そもそも誰に何を届けるのか」を間違えた場合の無駄も大きくなります。マーケティング2.0から学ぶべき最も重要なことは、すべての顧客を狙うのではなく、自社が最も価値を提供できる顧客を選び、その顧客から選ばれる理由を作ることです。「自社の『誰に何を』から整理したい」という場合は、waltsuがマーケティング戦略の設計から施策への落とし込みまでご支援します。
