・機能や価格の競争から抜け出せない
・差別化してもすぐ競合に真似される
・「選ばれる理由」を根本から作りたい
「他社より機能がいい」「他社より安い」「デザインで差をつける」。多くの企業は、既存市場の中で競合との差別化を考えます。しかし、機能を追加すれば競合も追随し、気づけば終わりのない比較競争に巻き込まれていないでしょうか。
先に結論をお伝えすると、カテゴリー戦略とは「そもそも、そのカテゴリーで戦う必要があるのか?」から問い直し、自社が勝てる土俵をつくる戦略です。競合と比較された後に勝つのではなく、顧客が選ぶときの「選択肢そのもの」を設計します。
本記事では、カテゴリー戦略の考え方とポジショニングとの違い、実践の5ステップ、身近な事例、よくある失敗、そして新カテゴリーとWebマーケティングをどう接続するかまで解説します。
この記事のゴール(読了目安 約8分)
「競合とどう差別化するか」の一段上にある「どの土俵で認識されるか」という問いを理解し、自社のカテゴリーを見直す手順を実行できるようになる。
結論:カテゴリー戦略とは「自社が勝てる土俵」をつくる戦略
まず、カテゴリー戦略とは何かを、よく混同されるポジショニングとの対比で押さえます。
「競合との差別化」ではなく「比較される市場」を変える
既存カテゴリーの中で価格・機能・デザインを比較して勝とうとするのが、従来の差別化です。カテゴリー戦略は、その手前を疑います。顧客の新しい課題や価値を起点に、新しいカテゴリーや選択軸そのものをつくるのです。
重要なのは「他社より優れているか」ではなく、「何のカテゴリーとして認識されるか」を設計すること。同じ商品でも、どのカテゴリーの棚に置かれるかで、比較される相手も、選ばれる理由も変わります。
カテゴリー戦略とポジショニングの違い

以下の表は、混同されやすい2つの考え方の違いをまとめたものです。
ポジショニングが「土俵の上での立ち位置」の話だとすれば、カテゴリー戦略は「そもそもどの土俵に上がるか」の話です。順番としては、カテゴリー戦略が一段上流にあります。
なぜカテゴリー戦略が重要なのか?
なぜ今、この考え方が注目されているのか。理由は3つあります。
理由1 商品・サービスの差が小さくなっている
機能を追加しても競合が追随し、こちらがさらに別の機能を足す。この繰り返しに入ると、機能競争と価格競争から抜け出せなくなります。
カテゴリーそのものを見直すことで、既存の比較軸とは違うところで選ばれる可能性が生まれます。同じ土俵で消耗するのではなく、土俵を変えるという選択肢を持てるかどうかです。
理由2 顧客はすべての商品を比較しているわけではない
私たちはつい「比較されたときに勝つこと」を考えがちですが、顧客は世の中の商品を全部並べて比較してはいません。
顧客が課題を感じたとき、「〇〇したい」→「それなら〇〇だ」→特定のブランドを思い出す。この流れの中で、課題とセットで最初に思い出される存在になること。比較の勝負が始まる前に選ばれる状態をつくるのが、カテゴリー戦略の狙いです。
理由3 カテゴリーが変われば競合や価格基準も変わる
たとえば「ジム」と「パーソナルジム」を比べてみてください。サービス内容、比較対象、料金相場、選ぶ理由、期待する成果まで、すべてが変わります。
同じ「運動する場所」でも、カテゴリーが変われば顧客が商品を見る基準そのものが変わる。価格競争から抜け出す最も本質的な方法は、値下げではなくカテゴリーの再定義だということです。
カテゴリー戦略を考える5つのステップ

ここからは実践の手順です。順番が重要なので、STEP1から進めてください。
STEP1 顧客が抱えている「未解決の課題」を見つける
カテゴリーや自社商品から考えるのではなく、顧客の課題から考えます。
なぜ既存の商品では満足できないのか。本当は何を実現したいのか。何に不満を感じているのか。現在どんな方法で代替しているのか。この整理がすべての出発点です。ここを飛ばして「新しい名前」から考え始めると、後述する失敗パターンに直行します。
STEP2 「本当の競合」を整理する
同業他社だけを競合と考えないでください。顧客が解決したい課題を基準に、同じ目的を達成できるものをすべて競合として洗い出します。
たとえば「会議時間を減らしたい」という課題なら、Web会議ツールだけでなく、チャット、AI議事録、ドキュメント共有、さらには「会議自体をなくす」という選択肢まで競合になります。顧客の頭の中にある選択肢の全体像をつかむことが目的です。
STEP3 自社だから提供できる「新しい選択軸」を見つける
「他社より〇〇」ではなく、「そもそも〇〇という選び方をしませんか?」という新しい基準を考えます。
比較表の中で1項目勝つのではなく、比較表の列そのものを追加する。カテゴリー戦略の中心はこの選択軸の設計にあります。
STEP4 カテゴリーを「一言」で表現する
どれだけ良い概念でも、説明しないと理解できない言葉では浸透しません。聞いた瞬間に「なるほど、そういうサービスね」と分かることが条件です。
チェックポイントは5つ。短時間で意味が理解できるか。顧客が使う言葉になっているか。課題または価値が伝わるか。人に説明しやすいか。そして、検索される言葉になり得るか。
STEP5 商品・Web・営業・広告・PRまで一貫させる
カテゴリー名を決めるだけでは定着しません。商品、Webサイト、営業資料、SEO、コンテンツ、広告、SNS、PR。すべての顧客接点で同じ価値と考え方を伝え続けることで、初めて顧客の頭の中にカテゴリーが根づきます。
事例から理解する「カテゴリーを変える」という考え方
身近な例で、カテゴリーの再定義がどう働くかを見てみます。以下の表は、選択軸がどう変わったかを整理したものです。
共通しているのは、既存カテゴリーの中で性能を上げたのではなく、顧客の課題に対する「解決の仕方」を再定義した点です。その結果、比較される相手も価格の基準も変わりました。
カテゴリー戦略でよくある4つの失敗
一方で、カテゴリー戦略には典型的な失敗パターンがあります。4つ紹介します。
失敗1 単に新しい名前を付けただけ
「次世代〇〇」「〇〇DX」「〇〇マーケティング」。新しい名称を作っただけでは、カテゴリーにはなりません。名前の裏に、顧客にとっての新しい価値があることが必要条件です。
失敗2 顧客の課題ではなく自社都合から考える
自社の商品を新しい言葉で言い換えただけのカテゴリーは、顧客に届きません。カテゴリー戦略の起点は、常に自社の商品ではなく顧客の課題です。STEP1を飛ばした戦略は、ほぼここで失敗します。
失敗3 カテゴリーを狭くしすぎる
「No.1になれる市場」を意識しすぎると、誰も必要としていない小さすぎる市場を定義してしまうことがあります。重要なのはNo.1になれることだけでなく、市場として成長する余地があること。狭さと成長性のバランスを見てください。
失敗4 カテゴリーを作って終わる
カテゴリーは「定義すること」より「浸透させること」のほうがはるかに難しい仕事です。Web、広告、SEO、SNS、PR、営業。あらゆる接点で伝え続けて、ようやく顧客の頭の中に定着します。作って満足したカテゴリーは、社内文書の中だけで生きて終わります。
【プロの視点】すべての企業が新しいカテゴリーを作る必要はない
カテゴリー戦略と聞くと「新しい市場を作らなければ」と思われがちですが、実際の選択肢は3つあります。
1つ目は、新しいカテゴリーを作る。既存カテゴリーでは説明できない新しい価値がある場合の選択肢です。2つ目は、サブカテゴリーを作る。既存の大きな市場の中に、新しい選択軸を立てる方法です(ジムに対するパーソナルジムがこの型)。3つ目は、既存カテゴリーの中で明確なポジションを取る。市場がすでに顧客に理解されているなら、無理に新しい言葉を作る必要はありません。
重要なのは、カテゴリーを作ること自体を目的にしないことです。最終的な目的は、「顧客にとって、自社を選ぶ理由を明確にすること」。その手段として、3つのうちどれが自社に合うかを選んでください。
【waltsu視点】カテゴリー戦略とWebマーケティングはセットで考える
最後に、Webマーケティングを支援する立場から、実務で必ずぶつかる課題をお伝えします。新しいカテゴリーを作った場合、最大の壁は「検索需要が存在しないこと」です。
世の中にまだ浸透していないカテゴリーは、当然、そのカテゴリー名で検索する人もいません。つまり「新カテゴリー名でSEOをすればいい」という単純な話にはならないのです。waltsuでは、この課題を時間軸で分けて設計します。
初期は、顧客がすでに検索している「課題・悩み」のキーワードから接点をつくります。中期は、コンテンツ・SNS・広告・営業・PRを通じて、新しいカテゴリーと考え方そのものを認知させます。後期は、カテゴリー名やブランド名を覚えてもらい、指名検索とブランド想起を増やしていきます。
流れにすると、「課題を検索する → 新しい解決方法を知る → 新しいカテゴリーを理解する → ブランドを覚える → 指名検索・問い合わせにつながる」。カテゴリーが浸透するまでの入口は、カテゴリー名ではなく顧客の課題側にある。これが実務上の最重要ポイントです。
まとめ
この記事の要点
・カテゴリー戦略は「どの市場で、何者として認識されるか」を決める戦略
・起点は自社商品ではなく、顧客の未解決の課題
・新カテゴリー/サブカテゴリー/既存内ポジションの3択から自社に合うものを選ぶ
・新カテゴリーの検索需要はゼロから始まる。入口は「顧客の課題」キーワードでつくる
カテゴリー戦略とは、競合より優れた商品を作るためだけの戦略ではありません。「どの市場で、何者として認識されるか」を決める、事業の一段上流の意思決定です。
そして最も重要なのは、新しいカテゴリーを作ること自体を目的にしないこと。「この課題なら、この会社」と顧客から思い出してもらえる状態をつくることが、カテゴリー戦略のゴールです。自社が今どの土俵で戦っているのか、その土俵は自社に有利なのか。まずはそこから見直してみてください。waltsuでは、カテゴリーの設計からWebでの浸透までを一貫してご支援しています。
