・Agentic AIの意味を知りたい
・AIエージェントとの違いが曖昧
・業務への活用を検討したい
ChatGPTをはじめとした生成AIの普及によって、「AIに質問して回答してもらう」ことは一般的になりました。しかし現在のAIは、質問に答える、文章を作るだけではなく、目標を理解し、必要な作業を考え、情報を集め、ツールを操作し、結果を確認して次の行動をするところまで進化しています。そこで注目されているのが「Agentic AI(エージェンティックAI)」です。
先に結論をお伝えすると、Agentic AIとは人から細かい指示を一つずつ受けるのではなく、与えられた目標に対してAIが計画・判断・行動し、結果を振り返りながらタスクを進める考え方です。Google Cloud「エージェント型 AI とは」も、エージェントAIを「自律的な意思決定と行動に重点を置いた、高度な形態のAI」と説明し、人間の介入を最小限に抑えながら目標を設定し、計画し、タスクを実行できると整理しています。生成AIが「何を作るか」のAIだとすれば、Agentic AIは「目的を達成するために何をするか」のAIです。
本記事では、Agentic AIの意味、生成AI・AIエージェント・RPAとの違い、動作の仕組み、構成する5つの要素、企業での活用例、導入の6ステップまで解説します。
この記事を監修した人

AIエンジニア
小洞 映ハユル コボラ
この記事のゴール(読了目安 約14分)
Agentic AIの概念と仕組みを理解し、AIエージェント・生成AI・RPAとの違いを説明でき、自社業務のどこへどこまで任せるかを考え始められるようになる。
Agentic AIとは
Agentic AIとは、与えられた目標を達成するために、理解→推論→計画→行動→確認→改善を繰り返しながら、自律的にタスクを進めるAIの考え方です。

従来の生成AIでは、人が「競合を調べて」と指示し、AIが競合情報を回答する、という使い方が中心でした。Agentic AIでは、人が「競合を調査して、来月のマーケティング施策を提案して」と目標を渡すと、AIが競合を調査し、Webサイトを確認し、市場情報を取得し、過去データを分析し、競合と比較し、施策案を作成し、結果をまとめる。複数のステップを自ら組み立てて実行します。
つまり、生成AI=「何を作るか」、Agentic AI=「目的を達成するために何をするか」という違いで理解すると分かりやすくなります。
なぜ注目されているのか
Agentic AIが注目される背景は3つあります。
生成AIの「回答するだけ」という限界
生成AIによって、文章作成、要約、分析などは大きく効率化されました。しかし実際の仕事では、AIに質問→結果を確認→別のシステムを開く→情報を入力→再びAIに質問、というように、人がAIと複数ツールの間をつないでいるケースが多くあります。Agentic AIでは、この「人がつないでいる部分」までAIが担います。
AIが外部ツールを操作できるようになった
AIはモデル単体では業務を完結できません。しかし、Web検索、データベース、CRM、メール、カレンダー、社内システム、APIなどと接続することで、実際の業務を進められるようになりました。Google Cloud「AI エージェントの基本コンセプト」も、AIエージェントの構成要素として、モデル、グラウンディング、ツール、データアーキテクチャ(メモリとデータの保存先)、オーケストレーション、ランタイムを挙げています。
AIエージェントが企業システムに入り始めている
AIエージェントは、営業、マーケティング、カスタマーサポート、開発など幅広い業務で活用され始めています。Deloitte「State of AI in the Enterprise 2026」でも、Agentic AIで最も影響が大きいのはカスタマーサポートで、サプライチェーン管理、R&D、ナレッジ管理、サイバーセキュリティも特に有望な領域として挙げられています(調査は2025年8〜9月に3,235人の経営層へ実施)。
生成AIとの違い
最も分かりやすい違いは、「生成するAI」と「行動するAI」です。以下の表にまとめます。
たとえば生成AIへの依頼が「営業メールを書いて」だとすれば、Agentic AIへの依頼は「休眠顧客の中から再商談の可能性が高い企業を探してアプローチ案を作って」です。後者では、CRM確認→候補抽出→企業情報調査→優先順位付け→メール作成→担当者へ確認依頼、までAIが進めます。
AIエージェントとの違い
Agentic AIとAIエージェントは混同されやすい言葉です。また、企業やサービスによって用語の使い方が異なるため、厳密な定義が完全に統一されているわけではありません。その前提のうえで、一般的な整理を紹介します。
AIエージェントは、特定の目標や役割を持ち、自律的にタスクを行うAIシステムです。競合調査エージェント、営業支援エージェント、問い合わせ対応エージェントなど、「仕事を実行する担当者」にあたります。
Agentic AIは、AIエージェントを含め、AIが自律的に計画・判断・実行・修正しながら目標達成を目指す仕組みや考え方の全体です。Google Cloudも、AIエージェントをAgentic AIの構成要素として説明しています。
AIエージェント=仕事を実行する担当者、Agentic AI=複数のエージェントやツールを使いながら自律的に仕事を進める仕組み。この関係で捉えると分かりやすくなります。AIエージェント自体の詳しい解説は、別記事をご覧ください。
【関連記事】AIエージェントとは?生成AIとの違いや仕組み・活用事例を解説
Agentic AIの仕組み
Agentic AIは、大きく5つの動作のサイクルで動きます。

認識する
まず、目標や現在の状況を理解します。「問い合わせ数が減った原因を分析して」という依頼なら、過去データ、Webサイト、広告、検索データ、CRMなど、必要な情報源を確認します。
推論する
取得した情報をもとに、「何が起きているのか」を考えます。流入は変化なし、CVRは低下、だからサイト側に問題がある可能性、という仮説を作ります。
計画する
目標達成までのタスクを分解します。アクセス分析→流入チャネル分析→CVページ分析→競合確認→改善案作成、という計画を組み立てます。
行動する
必要なツール(Web検索、データ取得、API、CRM、コード実行など)を使って、実際にタスクを実行します。
振り返る
実行結果を確認し、想定と違えば、別の情報を探す、計画を変更する、再実行する、という対応を行います。この認識→推論→計画→行動→振り返り→再計画のサイクルが、Agentic AIの中核です。
構成する5つの要素
Agentic AIは、次の5つの要素の組み合わせで成り立ちます。
AIモデル
情報を理解し、推論や判断を行う「頭脳」です。
ツール
AIが実際に行動するための機能です。検索、メール、CRM、データベース、ブラウザ、API、コード実行などにあたります。
メモリ
過去のやり取りや業務状況を保持する仕組みです。「前回この顧客へどんな提案をしたか」を覚えていることで、継続的な業務が可能になります。
グラウンディング
AIが回答・判断する際に参照する、企業データや外部情報です。AIの出力を自社データや事実に基づかせる役割を持ちます。
オーケストレーション
複数のタスクやAIエージェントを、どの順番で、どの役割で、どう連携させるかを管理する仕組みです。
具体的な活用例
企業業務での活用イメージを6つ紹介します。ここでは部門別に挙げますが、医療・製造・金融のように業種の業務そのものへ合わせて作る業種特化のバーティカルAIという広がり方もあります。
マーケティング
「先月のSEO成果を分析して改善施策を作る」と依頼すると、検索データ取得→アクセス分析→順位下落ページ抽出→検索結果確認→競合分析→改善案作成→担当者へ提示、まで進めます。
営業
「今週アプローチすべき企業を整理する」から、CRM確認→見込み顧客抽出→企業情報調査→優先順位付け→提案内容作成→メール下書き、まで進めます。
カスタマーサポート
問い合わせ内容を理解→顧客情報を確認→ナレッジ検索→回答、必要に応じて予約変更などの処理まで実行します。同調査でも、航空会社が予約の変更や手荷物の経路変更といった一般的な取引をAIエージェントで処理し、人のオペレーターが複雑な案件に集中できるようにしている事例が紹介されています。
ソフトウェア開発
要件→コード作成→テスト→エラー検知→修正→再テスト、まで進めます。開発は活用が最も早く進んでいる領域のひとつです。AIが作業することを前提にしたOrcaのようなエージェント向け開発環境も出てきています。
バックオフィス
請求書受信→内容確認→データ入力→承認依頼→会計システム更新、という定型処理の連なりを任せられます。
経営・データ分析
経営データを常時分析し、異常を検知し、原因を調査し、対応案を提示する、という監視型の業務にも向いています。
シングルエージェントとマルチエージェント
Agentic AIでは、1つのAIだけでなく、複数のエージェントを連携させる構成もあります。
シングルエージェントは、1つのAIエージェントが複数タスクを行う形です。SEOエージェントがキーワード分析・競合分析・記事改善までを担当する、というイメージです。
マルチエージェントは、役割の異なる複数のAIが協働する形です。

調査エージェントが市場・競合を調査し、分析エージェントがデータを分析し、制作エージェントが広告・記事を作り、品質確認エージェントが内容をチェックし、統括エージェントが全体を管理する。人間の組織のように、役割を分けて協働するAIシステムと考えると分かりやすいでしょう。
Agentic AIのメリット
メリットは5つに整理できます。
- 複数工程をまとめて自動化できる: 従来の「1作業=1自動化」でなく、複数の判断と作業をまたいだ業務を自動化できる
- 人の指示回数を減らせる: 毎回「次はこれを」と指示せず、目的だけ指定してAIが必要な作業を考える
- 業務スピードを上げられる: 情報収集→分析→制作→実行をAIが連続して進め、待ち時間を減らせる
- 24時間動ける: データ監視、問い合わせ、異常検知などを勤務時間に関係なく継続できる
- 人が重要な判断に集中できる: AIが調査・整理・分析・案出し・実行を担い、人は目的設定・顧客理解・例外対応・重要判断・最終責任を担う
課題・リスク
Agentic AIは「AIが回答する」だけでなく「AIが行動する」ため、通常の生成AIよりも管理が重要になります。
- 誤った判断のまま実行する: 生成AIなら間違った回答を表示するだけだが、Agentic AIは間違った判断のままメール送信・データ変更・顧客対応まで進む可能性がある
- 権限管理が必要: メール送信、データ削除、購入、顧客情報変更などの権限をどこまで与えるか決める必要がある
- セキュリティリスクがある: 外部ツール・Webサイトへ接続するため、プロンプトインジェクション、不正データ、情報漏えいなどのリスクを考える(情報漏えいの原因と実際の事例)
- AIの行動を説明できない: 複数ステップの判断について「なぜこの行動をしたのか」を後から確認できるよう、ログを残す必要がある
- コストが高くなる場合がある: 推論・検索・API・ツール利用を何度も行うため、単純なチャット利用より費用がかかる場合がある
重要になるHuman in the Loop
すべてをAIに完全自動化する必要はありません。むしろ重要なのは、「どこで人間を入れるか」です。リスク別に整理します。以下の表にまとめます。
たとえば、AIが競合調査→分析→広告案作成まで進め、人が公開承認し、AIが入稿→結果分析を行う、という設計です。Agentic AIでは、「AIに何をさせるか」と同時に、「AIに何をさせないか」を設計することが重要です。
RPAとの違い
業務自動化というと、RPAを思い浮かべる方も多いはずです。両者は考え方が異なります。
RPAは、あらかじめ決められたルール通りに動きます。A→B→Cという手順が決まった業務の自動化に向いています。
Agentic AIは、状況に応じて何をするかを判断します。問い合わせ内容を見る→内容を判断→必要なシステムを選ぶ→対応を変える、という処理ができます。
つまり、RPA=決められた手順を自動化する、Agentic AI=目標に応じて手順そのものを考える、という違いです。
企業へ導入する6ステップ
導入の進め方を6ステップで解説します。
解決する業務課題を決める
「Agentic AIを導入する」を目的にしないこと。問い合わせ対応が多い、競合調査に時間がかかる、分析が属人化している、という課題から始めます。
業務プロセスを分解する
問い合わせ→顧客確認→内容分類→情報検索→回答→履歴記録、というように工程へ分解します。
AIに任せる範囲を決める
各工程について、AI自動・人確認・人実行を割り当てます。
必要なツール・データへ接続する
社内ナレッジ、CRM、SaaS、API、データベースなど、AIが使う接続先と権限を設定します。
小さく検証する
まず1業務に限定し、精度、時間、費用、エラー、人の確認時間を確認します。
徐々に自律性を高める
最初から完全自動にしないこと。AIが案を作る→AIが操作し人が承認→低リスク業務のみAIが自動実行、と段階的に自律性を広げます。
【プロの視点】仕事を渡せる範囲を広げる仕組み
Agentic AIというと、「もっと賢いChatGPT」と理解されやすいものです。しかし、企業活用で重要なのはモデルの賢さだけではありません。
生成AIがどれだけ高性能でも、人がデータを取得→AIへ貼り付け→回答確認→CRM入力→メール送信、をしているなら、AIが担当しているのは一工程だけです。Agentic AIでは、データ取得→分析→CRM確認→文章作成→システム操作まで、AIがつなげて進めます。
つまり、生成AI=仕事の中の「作業」を支援する、Agentic AI=仕事そのものを一定範囲で任せる、という変化です。Agentic AIは「AIを賢くする技術」ではなく、「AIへ仕事を渡せる範囲を広げる仕組み」。企業にとって重要なのは、どのAIモデルを使うかだけでなく、「どの仕事を、どこまでAIへ渡せるか」を設計することです。
【waltsu視点】業務フローを再設計する
Agentic AIを導入するとき、「人が競合調査→AIが競合調査」と単純に置き換えるだけでは、価値を十分に活かせません。

たとえばマーケティングなら、従来は、検索データを見る→人が分析→競合を見る→企画を作る→記事を制作→公開→翌月また分析、という月次サイクルでした。Agentic AIなら、検索データを定期取得→異常・機会を検知→競合を自動調査→改善仮説を作成→修正案を生成→人へ承認依頼→公開→結果を再分析、という常時回り続ける業務へ変えられる可能性があります。
ここで重要なのは、「人→AI」という置き換えではありません。従来業務→目的を確認→不要工程をなくす→AIへ任せる工程を決める→人の承認ポイントを設計→新しい業務フローを作る、という考え方です。
Agentic AIの価値は、作業時間を10時間から1時間へ減らすことだけではありません。分析が月1回→毎日へ、改善が月1回→毎週へ、顧客対応が営業時間のみ→常時へ。これまでの人員では実現できなかった頻度で業務を回せることです。
Agentic AIによって企業が考えるべきなのは、「誰の仕事をAIに置き換えるか」ではなく、「AIが存在するなら、この仕事は本来どう設計すべきか」という問いです。Agentic AIは業務効率化ツールではなく、「業務プロセスを再設計するための技術」として考えることが重要です。この再設計を全社の取り組みとして進める考え方は、AIを前提に業務をつくり替えるAXとして整理しています。
よくある質問
Agentic AIとは簡単にいうと何ですか?
目標を与えると、AI自身が必要な作業を考え、情報収集・計画・ツール操作・実行などを進める、自律性の高いAIの考え方です。
Agentic AIは何と読みますか?
一般的には「エージェンティックAI」と読まれます。日本語では「エージェント型AI」や「自律型AI」と表現される場合もあります。
Agentic AIと生成AIの違いは?
生成AIは文章・画像・コードなどを生成することが中心です。Agentic AIは、生成AIなどを利用しながら、目標達成に必要なタスクを計画・実行します。
Agentic AIとAIエージェントの違いは?
AIエージェントは、特定の役割や目標を持って行動するAIシステムです。Agentic AIは、AIエージェントを含む自律的な計画・判断・実行の仕組みや考え方として使われることが多いです。ただし、現時点では用語の定義が完全に統一されているわけではありません。
Agentic AIとRPAの違いは?
RPAは決められた手順を自動化します。Agentic AIは、与えられた目標や状況に応じて、必要な手順を判断しながら行動します。
Agentic AIは何に使えますか?
マーケティング、営業、カスタマーサポート、ソフトウェア開発、データ分析、バックオフィス、サプライチェーンなどが代表的な領域です。
Agentic AIは完全自動化できますか?
技術的に自動化できる範囲は広がっていますが、すべてを自動化することが適切とは限りません。特に、顧客への重大な影響、契約、決済、採用、法的判断などでは、人間による確認・承認を設計することが重要です。
Agentic AIを導入するときに最も重要なことは?
AIツールを選ぶ前に、「どの業務を、どこまでAIへ任せるのか」を決めることです。業務プロセスを整理し、人とAIの役割・承認ポイントまで設計することが重要です。
まとめ
この記事の要点
・Agentic AIは、認識→推論→計画→行動→振り返りを繰り返す自律的なAIの考え方
・AIエージェント=実行する担当者/Agentic AI=仕組み・考え方の全体
・モデル・ツール・メモリ・グラウンディング・オーケストレーションの5要素で構成される
・「置き換え」でなく、AI前提で業務フローを再設計し、人の承認ポイントを設計する
Agentic AIとは、目標を理解し、認識→推論→計画→行動→確認→改善を繰り返しながら、自律的にタスクを進めるAIの考え方です。生成AIが「質問に答えるAI」「コンテンツを作るAI」だったのに対し、Agentic AIは「目的を達成するために行動するAI」へ進化しています。
一方で、AIが行動できる範囲が広がるほど、権限、セキュリティ、誤判断、人による監督、ログ、責任などの設計も重要になります。導入で重要なのは、人の仕事をAIへ置き換えることではなく、現在の業務→本来の目的→AIができること→人が判断すべきこと→新しい業務プロセス、という順番で考えることです。
これまで「人がツールを操作して仕事をする」が前提だった企業の業務は、「人が目的を決め、AIが仕事を進め、人が重要な判断をする」という形へ変わっていきます。まずは、時間のかかっている業務をひとつ工程分解し、AIへ渡せる範囲を見立てるところから始めてみてください。waltsuでは、マーケティング業務を起点に、Agentic AI・AIエージェントを前提とした業務フローの再設計と導入をご支援しています。
