
誰も見ていないサイトを、本気でつくり直した話。
公開日:2026/08/01 更新日:2026/08/14
| 会社名 | waltsu株式会社 |
|---|---|
| 事業内容 | マーケティング支援 |
| 従業員数 | 〜10名 |
| 本社所在地 | 東京 |
waltsuの自社サイトは、現在で第3世代になります。
この記事は、その1つ前——法人設立から6ヶ月の時期につくった、第2世代の制作ストーリーです。マーケティングを主軸にしている会社が、どのタイミングで自社サイトを作り変えるのか。当時の判断と、その裏側をまとめました。
目次
「30分でつくったサイト」からのアップデート
リニューアル前は、どんなサイトだったんですか?
銀行に見せることを主な目的にして、STUDIOというノーコードツールで30分ほどでつくったサイトでした。クオリティは、正直かなり低かったです。つくった自分自身にも、まったく思い入れがないサイトでした。
旧サイトで、事業に支障は出ていましたか?
集客や営業に関しては、まったく出ていませんでした。当時は知人からの紹介が主軸で、お客さまがサイトを見て問い合わせてくるという流れがそもそもなかった。指摘を受けたこともありませんでした。
事業を回すだけなら、あのサイトのままでも問題はなかったんです。
それなのに、なぜリニューアルを考えたんですか?
理由は2つあります。ずっと引っかかっていたことと、動かざるを得なくなった事情の、両方でした。
1つ目は、単純にプライドの問題です。マーケティングを提供している会社が、サイト制作を請け負っている会社が、自分たちのサイトはあの状態でいいのか。言っていることとやっていることが合っていない状態を、自分がやっているのが嫌でした。
「まずは自分のことをちゃんとしたら?」と、自分で自分に思っていました。
2つ目が、決定打です。求人広告を出すことを決めました。
waltsuは当時から、業務委託のメンバーで組み立てていく前提の会社だったので、優秀な仲間をどれだけ集められるかが、そのまま事業の成長速度になります。紹介だけでは足りないフェーズに来ていたので、広告費をかけて母集団をつくることにしました。
ここで、旧サイトが問題になりました。
求人広告を見た人は、必ず会社を調べます。しかし創業から半年の会社なので、調べても大した情報は出てきません。判断材料は、実質的に自社サイトだけです。
広告費を払って人を集めておいて、行き着く先があのサイト。それは、穴の空いたバケツに水を注ぐのと同じです。
集客には支障がなかった。けれど採用では、確実に支障になる。しかも広告を出す日が決まっている以上、期限のある課題でした。「いつかやろう」と思っていたことに、締め切りがついた。それがリニューアルのきっかけです。
見られていないサイトに、なぜ手をかけるのか
当時の月間訪問者数は、どのくらいでしたか?
まったくなかったですね(笑)。月間10セッションくらいじゃないでしょうか。
ただ、見られる回数が少ないから適当でいい、とは考えませんでした。むしろ逆です。10セッションしかないということは、1セッションの重みが極端に大きいということですから。求人広告から流入してくる人は、まさにその数少ない1人になる。そこで判断されて終わります。
一方で、大量のPVを前提にした作り方をする必要もない。網羅性も、更新頻度も、SEOも、この時点では要りませんでした。
訪問者が少ないことは、手を抜く理由にはならない。ただし、何を作らなくていいかを決める材料にはなる。
マーケティングの原点に立ち返る
制作を始めるにあたって、まずは誰に、何を伝えたいのか。そこだけを考え直しました。
分析するデータなんてありません。ヒートマップも、離脱率も、検索クエリも、何も出てこない。だからひたすら、「誰に」と「何を伝えたいのか」を、自分の中で腑に落ちるまで数日考えました。
誰に。2つに絞りました。『紹介経由でお客さまになりうる方』と『求人にエントリーしてくれる未来の仲間』です。どちらも数は多くない。けれど、どちらもこちらを見定めている人たちでした。
何を伝えるのか。会社の考え方です。実績でも、サービス一覧でもなく、waltsuが何を考えてこの事業をやっているのか。創業半年の会社に、それ以外の判断材料はありませんでした。
主軸に据えた「語れるサイト」という考え方
サイトの中に、工夫はいくつも仕込んであります。ただ、それを説明書きとしてサイト上に並べるのではなく、お会いしたときに自分の口でプレゼンできる状態にしておく。
サイトが全部説明してしまったら、こちらから話すことがなくなる。
紹介でお会いした方にも、エントリーしてくれた方にも、必ず一度は会って話す機会があります。そのときにサイトを開いて、「ここはこういう意図でこうしています」と語れる。サイトが会話の材料になり、会話がサイトの意味を補完する。
見られる数を増やすためではなく、目の前の一人に語るためのサイト。それがこのリニューアルの主軸になりました。
前提条件は、最小コスト・最小工数
当たり前ですが、当時はお金もありませんでした。大量の工数も割けない。コストを抑える、工数を抑える、制作期間を長くしすぎない。それでも成果は最大化する。そのバランスを取ることが、このプロジェクトの前提条件でした。
削ったのは、量です。ページ数、情報量、機能。増やそうと思えばいくらでも増やせるものは、全部削りました。削らなかったのは、思いやビジョンといった、本当に伝えたい部分だけです。
サイト制作の流れ
コンセプト設計
方向性そのものは、前段で決まっていました。あとは、それをデザイナーに渡せる粒度まで言語化する作業です。最終的に、3つに絞りました。
- ストレスを感じない
- シンプルで、見やすい
- 想いがビジュアルで表現できている
3つ目の「想い」が抽象的なままだと形にできないので、さらに分解しました。誠実であること。スピードがあること。本質を追求していること。この3語を、デザインで表現できているかどうかの判断基準に置きました。
なかでも外せなかったのが、スピードです。
当時は今のようにメンバーがいる状態ではなく、フリーランスに近い、ほぼ一人社長のような体制でした。業務委託のメンバーもそれほど多くはない。会社として提供できる仕事量が、自分の稼働にそのまま左右される状態です。
だからこそ、対応の速さ、レスポンスの速さ、意思決定の速さ、仕事全体の進行スピードを何より重視していました。それは日々の業務の話というより、会社そのものの価値観だと思っていた。
会社の価値観がスピードなら、サイトも速く感じられるべきだ。
読み込みが遅い、どこに何があるか分からない、読ませる文章が長い。それだけで、この会社は遅いと伝わってしまう。逆に言えば、サイトの体験そのものが、言葉より先にスピードを証明できるということでした。
表現方法を探す
言語化はできても、それがどんな見た目になるのかは別問題です。
そこで、まとめサイト経由でコーポレートサイトをとにかく大量に見ました。デザインの参考を集めるというより、「誠実」「スピード」「本質」がビジュアルでどう表現されているのかを探す作業です。ビジュアルの使い方、図解の入れ方、余白の取り方を1つずつ確認していきました。
ベンチマークの確定
数多くのサイトを見た結果、コンセプトを表現できていると感じたのが、光通信 様とdataX 様のサイトでした。
非常にシンプルで、洗練されていて、誰が見ても分かりやすい。情報がきちんと整理されている。装飾で語るのではなく、構造そのもので伝わってくる作りでした。この2つをベンチマークに設定して、ここから実際のデザインに落としていきます。
方向性が決まってから、想いとともにデザイナーへ
方向性が固まったあと、デザイナーに相談しました。こういうデザインにしたい、こういう考え方でサイトをつくりたい、こういう方向性で進めたい、と伝えて、そこからデザインを起こしてもらった形です。
順番が逆になることは、よくあると思います。デザインの話から始めてしまって、あとから「そもそも何のために作るのか」が問われる。今回は、その順番だけは間違えないようにしました。
完成した、waltsu 第2世代のコーポレートサイト
リニューアル後
リニューアルして、どんな変化がありましたか?
一番大きかったのは、waltsuが考えているマーケティングという概念を、自分たちのサイトでちゃんと語れるようになったことです。
自分たちがマーケティングをどう捉えているのか、何を大切にしているのか。それを、サイトそのものを使って説明できるようになりました。商談やコミュニケーションの中でも、コンセプトの説明がしやすくなっています。コンセプトを説明すると、「面白いですね」と言われることもありました。
整ったサイトになった、だけではない。相手の記憶に残るサイトにはなったと思っています。
この事例で伝えたいこと
Webサイトは、マーケティングファネルのうちの1つでしかありません。サイトを変えるだけで、事業が大きく動くわけではない。
ただし、ユーザーが検討し、判断を変えていくいくつものポイントで接点を持てる、非常に重要な施策の1つでもあります。だからこそ、その会社のフェーズと目的に合わせて設計することが重要ですね!
当時のwaltsuに必要だったのは、大量のコンテンツでも多機能なサイトでもなく、紹介や求人広告から来た1人に、自分たちの考え方を伝えられるサイトでした。依頼する側も、制作する側も、いま最適なサイトは何なのかを考えずに進めれば、意味のないサイトができあがります。
自社サイトも、その例外ではないということですね!



