・資料や求人票で見かけた「MOps」の意味を知りたい
・MA運用やRevOpsとの違いを整理したい
・専任チームのない会社で何から始めるかを知りたい
施策は増えたのに、どれが成果につながったのかを前回と比べられない。そうした場面で目にするのが「MOps」です。本記事のMOps(エムオプス)はマーケティングオペレーション(Marketing Operations)の略です。
MOpsとは、施策が毎回同じ形で回り、結果を比べられるように、手順・ツール・データの決まりを整える仕事です。MOpsは専任チームの名前である前に、決まりごとを持つ役割で、少人数の会社でも始められます。本記事では、担う仕事、MA運用やRevOpsとの違い、最初に決める3つのルールを解説します。
この記事を監修した人

マーケティングディレクター
玉城 彪眞タマキ ヒュウマ
この記事のゴール(読了目安 約7分)
MOpsを1文で説明でき、MA運用・RevOpsとの違いと、最初に決める3つのルールが分かる。
MOpsとは
MOpsが整えるのは、施策を同じ形で回し、結果を比べるための決まりです。
マーケティングを回す土台の仕事
MOpsは誰がどのツールを触るか、データをどう数えるか、施策をどの順で進めるかを決めます。施策の担当者が中身を考えることに集中できる状態を作る役割で、部署名にも担当者1人の役割にも使われます。
ほかのMOPSとの区別
マーケティング以外の「MOPS」もあります。化学では生化学の実験で使う緩衝液、石油ではPlattsが公表するシンガポールの石油製品価格の評価の平均(JOGMECの石油・天然ガスレビュー)、台湾では台湾証券取引所の開示サイト(公開資訊觀測站)を指し、大文字でMOPSと書くことが多い言葉です。以下はマーケティングのMOpsの話です。

MOpsが求められる理由
理由は2つあります。1つ目はツールの増加です。毎年まとめられる製品一覧(Marketing Technology Landscape)では、製品数が2011年の150から2025年版で15,384、2026年版で15,505になりました。15年でおよそ100倍です。2026年版は前年比0.79%増とほぼ横ばいで、増やすより手元のツールを見直す段階に入ったとも読めます。
2つ目は施策が増えるほど「リード」などの数え方が担当者ごとにずれ、前回と比べられなくなることです。
2022年の海外の調査では、MOpsの担当者かチームを置く組織が前年の65%から80%超に増えました。ただし回答者は550人超のMOps担当者で、企業全体の設置率ではありません。

MOpsが担う5つの仕事
MOpsの仕事はツールの管理、データの定義、計測の設定、手順と受け渡し、報告と見直しの5つです。
どれも決めた内容を文書に残し、関わる人が同じものを見られるようにする仕事です。
MA運用・RevOpsとの違い
混同されやすい言葉は扱う範囲の広さで分けると整理でき、MA運用はMOpsの一部、MOpsはRevOpsの一部という関係です。
2023年の海外の調査では、年商1,000万ドル未満の組織で、MOps担当者の69%が営業部門と、55%が営業オペレーション部門と協業していました。少人数の会社のMOpsはRevOpsに近い動き方になりやすいといえます。
MOpsで決める3つのルール
最初に文書に残すのは次の3つで、どれも営業と一緒に決めます。
リードをどう数えるか
問い合わせと資料請求を同じ1件と数えるか、分けるかを決めます。マーケティングの「リード」と営業が追いたい相手がずれると、報告と実感がかみ合いません。リードの種類と呼び名は営業と同じ言葉にそろえます。
流入元をどう名付けるか
展示会からどれだけサイトに来たのかを知りたい、という相談を受けたことがあります。アクセス解析では、参照元の情報が残らない訪問は「ダイレクト」にまとめられ、展示会の資料から来た人もほかの経路と見分けがつきません。そこで、展示会用のページへのリンクに流入元を示すパラメータを付けてもらうよう依頼しました。採用サイトでも求人媒体からの応募と直接の応募が分かれていなかったため、媒体ごとの掲載URLにパラメータを付けることで合意しています。
媒体名の書き方が人によって違うと、同じ展示会が別の行に分かれて集計されます。名付けの規則を1枚の表にまとめ、全員が同じ表を見るようにします。
営業へいつ渡すか
どの条件のリードを営業に渡し、誰がいつまでに連絡するかを決めます。渡す条件、期限、渡した後の担当がそろっていないと、リードは一覧に残ったまま放置されがちです。
少人数の会社のMOps
専任のチームがなくてもMOpsは始められます。
部品をつくるBtoBの製造業で、MAツールを新しく入れる計画をやめ、その費用をメールの制作と配信に回す判断をしたことがあります。資料請求や展示会で集めたリードは、営業支援ツールの上で手作業のタグを付け、「有効なリード」「今は対象外だが将来性のあるリード」「資料請求だけのリード」に分けました。そのうえで毎月メールを送り、本文は共通にして、末尾の案内だけをリードの種類ごとに変えています。展示会で集めたリードは営業が個別に連絡するので、メールの配信対象から外しました。
ツールを入れればリードが育つわけではなく、何をどう分けて何を送るかが決まっていないと動かない、というのがこのときの判断でした。
AIでMOpsはどう変わるか
AIが担える作業は増えますが、決まりを書く仕事は人に残ります。
AIに任せやすい仕事
- データの整理: 社名の表記ゆれや重複をまとめる
- レポートの下書き: 毎月の数字と前月との差をまとめる
- 規則どおりかの確認: パラメータが名付けの規則に沿っているかを見る
人が持ち続ける判断
何をリードと呼ぶか、どの数字で施策をやめるかは、事業の事情を知る人が決めることです。AIに渡す前に、人が決めた定義を文書にしておく必要があります。工程の見分け方は別記事で解説しています。
【関連記事】AIエージェントに任せられる仕事とは?工程別のできること・できないことを解説
MOpsの始め方
始め方は次の5つの手順です。
- 書き出す: 使っているツールと毎月見る数字を一覧にする。先に買い足さない
- 1枚に書く: 3つのルールを1枚の文書にまとめる
- 営業とそろえる: 定義を営業と読み合わせ、食い違いを直す
- 名付けを統一する: 新しく作るリンクから規則どおりに付ける
- 月に1回見直す: 決まりどおりに数えているかを確かめる。1人で抱え込まない
どの手順もツールの設定より決まりを文書にすることが先です。

【プロの視点】ツールより言葉の定義をそろえる
MOpsを解説する記事の多くは、ツールの管理と業務の効率化を中心に書いています。しかし先に見るべきは部署ごとに同じ言葉を同じ数え方で数えているかです。
「リード」や「商談」の数え方がマーケティングと営業で違えば、どれだけ自動化しても会議で数字が合いません。
そのため、MOpsの進み具合は入れたツールの数では測れません。合意して文書に残した定義の数で見るほうが実態に近く、定義が1つそろえば、比べられる数字も1つ増えます。
【waltsu視点】比べられる試行を増やす
試した回数を増やしても、名付けと数え方が毎回違えば前回と比べられず、次に何を変えるかを決めにくくなります。MOpsは試行を比べられる形で残すための決まりだと考えています。
waltsuが重く見ているのは、施策の数より、前回と比べられる試行の数です。名付けと数え方がそろっていれば、試した結果がそのまま次の施策を決める材料になります。
明日できる最初の一歩は、今月の施策で「リード」を何と数えているかを、マーケティングと営業で1行ずつ書き出して見比べることです。1行でも食い違っていれば、そこが最初に決めるルールです。

よくある質問
MOpsについてよくいただく質問をまとめました。
MOpsの読み方は?
「エムオプス」と読みます。マーケティングオペレーションズとも呼びます。
専任の担当者は必要?
最初は兼任でかまいません。決まりを書いて直す人を1人決めれば始められます。
MOpsに向いている人は?
ツールに抵抗がなく、営業とも話せる人です。数字の定義の違いに気づける人は、決まりを整える役に向いています。
MLOpsとは違うもの?
違うものです。MLOpsは機械学習のモデルを本番で運用し続けるための取り組みを指します。
何から始めればいい?
3つのルールを1枚の文書に書くことからです。書いたら営業と読み合わせます。
この記事のポイント
・MOpsは施策を同じ形で回し、結果を比べられる決まりを整える仕事
・MA運用はMOpsの一部、MOpsはRevOpsの一部
・最初に決めるのは、リード・流入元・営業への渡し方の3つ
・専任チームがなくても、決まりを持つ人を1人決めれば始められる
まとめ
MOpsは施策を同じ形で回し、結果を比べるための決まりを整える仕事です。ツールも施策も増えた今、同じ言葉を同じ数え方で数えているかで、結果を比べられるかが決まります。
まずは3つのルールを1枚に書き、営業と読み合わせるところから始められます。決まりの作り方や、AIに渡せる形への整え方に迷う場面が出てきたら、waltsuが数え方の設計から運用までご支援します。





